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『忘れられた人類学者(ジャパノロジスト)』田中一彦(忘羊社)

『忘れられた人類学者(ジャパノロジスト)―エンブリー夫妻が見た〈日本の村〉』田中一彦(忘羊社)

2017年
320頁




目次(収録作品)

プロローグ 忘れられた人類学者

第一章 稲作の理想郷
 満ち足りた〝ムラ〟
 浸透する貨幣経済
 軍靴の音 
「機械時代」の影響

第二章 導かれた二人
 少年期の日本体験
 ロシアから来日したエラ一家
 船上のロマンス
 二十二カ所に上った候補地
「最良の友人」愛甲慶寿家との出会い
「私は、日本に帰ることを熱望していた」
「村人たちはなんらの疑惑ももたなかったが、真の意図を疑う官憲もいた」
 遺された「タイムカプセル」
 調査を支えた若き日本人助手

第三章 「はじあい」 のムラ 
 文化の基底としての「協同」
「はじあい」の語源
「部落生活の特色は協同活動と贈り物のやりとりである」
 組―当番制の自治システム
 ぬしどり―甲斐甲斐しき世話役
「講」という互助システム
「田植えはつらい仕事なので、冗談をいったり、卑猥な話をして救われる」
「かったり」は強制だったか
「橋が流されるたび、部落は結ばれていく」
 ある子どもの遭難 
 村に満ち溢れる「贈答」
 仮のお返し「おうつり」

第四章 奔放な女たち
 赤裸々な性
 慎みと粗野
「私たちばアメリカに行かせて」
 羞恥心の彼我
「ジョンを貸してくれないか」
「みんなが酔っぱらって、踊りまくり、下品な歌のない宴会は、ほとんどない」

第五章 イエと家族の生活誌
 協同の基本単位は「世帯」
 養子縁組と〝いとこ婚〟
「家は、単に風水をしのぐ以上のものである」
 家と部落への誠実 
 エラ、お産に立ち会えず 
 寛大すぎる子育て
「ここの母親たちは無限の忍耐を持っている」 
「田舎の学校に落第というものはない」
 隣り合わせの病と死 
 試験結婚(三日加勢)という風習
 隠居後の人生

第六章 女の一生
「女の子たちは、妊娠や月経についてほとんどなにも教えられていない」
 授乳とトイレット・トレーニング
「女たちが運んでいる荷物の重さには、ただ驚嘆するばかりである」
「夜這いを拒絶することも受け入れることも女の選択のままであった」
 ある少女の恋文
「かつて、花嫁の純潔は重要なこととはみなされていなかった」
「若い女性は結婚を拒否することができたし、再婚はきわめて普通のことである」
 芸者遊びと性病
「彼女たちは、少額の金を稼ぐことを誇りに思っている」
「ここの女たちはしばしば、夫とは別の男ば持っとる」
「未亡人は特別な地位をもっている」
 おおらかな性愛 
「たんなる犠牲者ではなかった」

第七章 巡る自然と暮らし
 旧暦と新暦のはざまで
「東の国」の自然観
「どんな小さな儀式でも、しめくくりに酒が出る」
 塩辛すぎた郷土食
 百を超える民謡を収集・英訳 
「神々に対して、彼女たちはなまんだという」
「農民の日常生活にとって重要なのは、家庭や道端の神々と祈祷師である」
 祈祷師と犬神持ち 

第八章 ムラの光と影
 夫妻が愛した「山の部落」 
「教育のある者のほとんどすべてが、村を離れる方法を探していた」
 嘲笑という名の制裁
 仲介の原理
「不適合者」とムラ

第九章 変わりゆくもの、変わらないもの
 須恵にもたらされた「予期せぬ変化」
 機械時代の犠牲者―愛甲慶寿家の死
 日本の近代化はどのように浸透したか
 エラの見た戦後日本
「古い苦痛は新しいものに取り替えられた」

第十章 対日政策との葛藤
 ハワイ大、トロント大を経て特務機関を歴任
 日本人への異端視に異議
「日本占領後の困難を『劣った』人種のせいにしてはならない」
 GHQのポストを固辞
 ゴーラー、ベネディクトの〝自民族中心主義〟への批判
「アメリカの占領政策は日本の民主化を遅らせるだろう」
『須恵村』が農地改革に影響

エピローグ 須恵村はいま
『須恵村』はなぜ忘れられたのか
『菊と刀』への批判
「エンブリーさん」の記憶
「はじあい」と「かちゃあ」は健在
 年に五十回以上の祭りが存続
「はじあい」を支える女たち
 お裾分けという「はじあい」
「ふるさとづくりは、経済開発偏重に対する反動なのだ」

資料編 須恵村の年中行事と祭り

戦時色濃き1935年(昭和10)、熊本で最も小さな農村、須恵村にやってきた社会人類学者ジョン・エンブリー一家。戦前唯一の日本農村研究書を著し、ベネディクトの『菊と刀』やGHQの戦後改革にも多大な影響を及ぼしたエンブリーとその妻エラが、共感をもって洞察した〈協同〉社会の精神を未来に向けて問い直す。

出典:忘羊社公式サイト

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