『新版 全体主義の起原3 全体主義』ハンナ・アーレント、大久保和郎・大島かおり訳(みすず書房)全3巻
新版2017年
504頁
定価:5,280円(税込)
目次(収録作品)
新版にあたって——凡例
まえがき(1968年の英語分冊版より)
第十章 階級社会の崩壊
1 大衆
2 モッブとエリートの一時的同盟
第十一章 全体主義運動
1 全体主義のプロパガンダ
2 全体主義組織
第十二章 全体的支配
1 国家機構
2 秘密警察の役割
3 強制収容所
第十三章 イデオロギーとテロル——新しい国家形式
エピローグ(英語版第13章 イデオロギーとテロル——新しい統治形式)
訳者あとがき 大島通義
新版への解説 矢野久美子
〈現在までのところ、すべては可能であるという全体主義の信念は、すべてのものは破壊され得るということだけしか証明してこなかったように見える。けれども、すべてが可能であることを証明しようとするその努力の中で全体主義体制は、人間が罰することも赦すこともできない犯罪が存在するという事実をそれとは知らずにあばき出した。不可能なことが可能にされたとき、それは罰することも赦すこともできない根源的な悪となった。この悪は、利己主義や貪欲や利欲や怨恨(ルサンチマン)や権力欲や怯惰(きょうだ)のような悪い動機をもってしてはもはや理解することも説明することもできまい。それゆえまた怒りをもってこれに報復することも、愛によってこれを忍ぶことも、友情によってこれを赦すことも、法律をもってこれを処罰することもできまい。屍体製造工場に、あるいは忘却の穴に投げこまれた犠牲者たちが、刑吏たちの目にはもはや〈人間的〉と見えなかったのとまったく同様に、この最も新しい種類の犯罪者はわれわれ一人一人が人間の罪業の意識で連帯することを覚悟しなければならぬ枠をすら超えている〉
人類史上それまでにはなかった全体主義という枠組から、ナチス・ドイツとソヴィエト・ロシアの同質性と実態を分析する。
出典:みすず書房公式サイト