1999年11月20日初版発行
246頁
著者は、フランス文学者。(1933-2017)
「愛国心の探求」としては、全体的には散漫。また、言っている事、言わんとしている事は、重要でまともな見識だが、いまひとつ意を尽していない。文章は平易なのだが、分かりにくいと思う。
愛国心について、正面から具体的に述べているのは、主には第8章第1節だけで、そこは、よい。戦後の高校生が映画の特攻の実写の場面で拍手して笑ったという会田雄次のエピソードなど、ここだけでも本書を読む価値はあるかもしれない。(このエピソードは、『たどり来し道』(下記参照)にあるようだ)
気になった所。
(p.48)
「ヨーロッパのことはすべて、二千年も昨日の如し、という具合だ。歴史的事情が生き続けている。ことにフランスでは、先祖のガリア人がケルト語を捨ててラテン語を話すようになったため、教養人の心が古代ローマ文化に直結している。」
本当だろうか。筆者は(その辺に詳しくないが)事実ではないと思う。この後の文章に「幻想」などと出てくるから、実際、歴史的には直結していないが、「幻想」として「憧れ」として、そう思っているというのなら分かるが。
(p.133)
「しかし、近年の人類学の進歩は凄い。アイヌは原日本人の一要素であって、うっかりすると沖縄人と同じ要素ではないか、と言われている。もう少し日本語語源学が進むと、ほとんどの大和言葉はアイヌ語起源だと証明されるかも知れない。」
ここはよく意味が分からないし、論拠も不明。
[筆者注]
(p.113,p.154)「日本青年の歌」とあるが、「青年日本の歌」ではなかろうか。
(p.191)「吉田某の本にある虚偽」。吉田清治のこと。
[参考]
『たどり来し道』会田雄次(1996・新潮社)
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『梅原猛著作集15 たどり来し道』会田雄次(小学館)
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