『ぼくは物覚えが悪い―健忘症患者H・Mの生涯』スザンヌ・コーキン、鍛原多惠子訳(早川書房)
2014年
469頁
目次(収録作品)
悲劇の序章/「明らかに実験的な手術」/ペンフィールドとミルナー/三〇秒/思い出はかくのごとく/「自分と議論する」/符号化、貯蔵、検索/覚えることのない記憶(運動スキルの学習/古典的条件づけ、知覚学習、プライミング)/ヘンリーの世界/事実の知識/上がる名声、悪化する体調/ヘンリーの遺産
1953年、てんかん治療のための脳手術から目覚めた27歳のヘンリー・モレゾンは、別の深刻な障害を負っていた――手術後に新しく経験した出来事をなにひとつ記憶できなかったのだ。こうして重度の健忘症患者となったヘンリーは、永遠に「現在」のなかに閉じ込められてしまった。しかしだれが予測しただろう。やがてあまたの医師がこの不幸な、しかし精神医学史上に珍しい患者に注目し、彼の脳とその症例があらゆる方向から精査され、ひとつの医科学分野を根底から刷新することになろうとは。
2008年に世界中の研究者に悼まれつつ亡くなったH・Mことヘンリー・モレゾンの数奇な生涯と、それと表裏一体である記憶の科学の発展史を、研究者として彼に40年以上寄り添った神経科学者自身が余すところなく描いた、驚きと感動の実録。
出典:ハヤカワ・オンライン
原題『Permanent Present Tense』