2015年11月10日第1刷発行
301頁
目次(収録作品)
黎明――原始的想像力の日本的構造
幻視――原始的想像力のゆくえ
火山列島の思想――日本的固有神の性格
廃王伝説――日本的権力の一源流
王と子――古代専制の重み
鄙に放たれた貴族
心の極北――尋ねびと皇子・童子のこと
日知りの裔の物語――『源氏物語』の発端の構造
フダラク渡りの人々
偽悪の伝統
飢えたる戦士――現実と文学的把握
あとがき
新装版あとがき
解説――荒川洋治
「日本」になる遥か前から、この列島には火山があった。
いにしえよりこの土地に培われ息づいてきた想像力のあり方から、私たちの精神は何を受け取り、何を忘却しているのか。忘れてなお、何に縛られ、何から自由になりたいのか。
画期的視点をひらいた表題作「火山列島の思想」のほか、夜と朝のはざま、すべてが一変して神が退場する夜明けの時刻から時間構造を論じる「黎明」。呪術がはらむ実用性と、実用からの逸脱として紡がれた〈ことば〉にこそ文学の起源を発見する「幻視」。生涯を童子の姿で通した人物の心の内を、数少ない資料を繋ぎあわせて見出そうと試みる「心の極北」……。
本書に収められた11篇すべてにおいて、著者は徹底してことばに寄り添い、残された文字をたよりに、かつて生きていた人々の心の断片に肉薄してゆく。その思考のうねりのなかで、古代中世の誰かのうちに、自らの断片を感じとることすらできる。日本古代文学研究史上の記念碑的作品にして、無二の名著である。出典:講談社BOOK俱楽部
本書は、1993年刊ちくま学芸文庫版を底本とした新装版。
著者は国文学者(1923-2010)。
本書は主に国文学の専門誌に発表した論文をまとめたもの。書名は所収の3番目の論文から採っているが、この「火山列島の思想」という軸で構成されているわけではない。
古事記、日本書紀、源氏物語、補陀落渡海、平家物語等について論じている。
『記紀』や源氏物語の知識を前提として書かれていて、また引用の古文は訳されていないので、その点は難しい。
原始の呪術的想像力、幻視を古事記や天理教(「泥海古記」)などを例に論じた「幻視――原始的想像力のゆくえ」が興味深い。
[関連]
『火山列島の思想』益田勝実(1993・ちくま学芸文庫)
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『益田勝実の仕事2 火山列島の思想―歌語りの世界/夢の浮橋再説ほか』益田勝実(2006・ちくま学芸文庫)