『ツァラトゥストラはこう言った』(上下)ニーチェ、氷上英廣訳(岩波文庫)
上巻(第一部・第二部)
1967年4月16日初版発行
275頁
下巻(第三部・第四部)
1970年5月16日初版発行
365頁
著者はドイツの哲学者、古典文献学者。
哲学書の中で一番知られている、また読まれている本と言ってよいかもしれない。対抗は『ソクラテスの弁明』だろう。
プラトン主義、伝統的な形而上学、キリスト教、カント哲学などの認識、考えを批判している。文章は読みやすいが比喩が多く、ある程度の知識がないと何を批判しているのか、主張しているのかわからない部分も多い。
上巻 p.16
かつては霊魂は肉体に軽蔑の眼をむけていた。そして当時は、この軽蔑が最高の思想であった。――霊魂は肉体を、瘠せて、醜い、飢えたものにしてしまおうと思った。こうして霊魂は、肉体と大地から脱却できると信じたのである。おお、この霊魂自身のほうが、もっと瘠せて、醜く、飢えていたのであった。そして残酷なことをするのが、こうした霊魂の快楽であった!
しかし、わが兄弟よ、あなたがたもわたしに告げなければならない。あなたがたの肉体が、あなたがたの霊魂についてどう言っているかを。あなたがたの霊魂も、貧弱であり、不潔であり、みじめな安逸なのではあるまいか?
まことに、人間は汚れた流れである。汚れた流れを受け入れて、しかも不潔にならないためには、われわれは大海にならなければならない。
見よ、わたしはあなたがたに、超人を教えよう。超人は大海である。あなたがたの大いなる軽蔑は、この大海のなかに没することができる。
こんな調子で延々と語られる。
『ツァラトゥストラ』には、さまざまな翻訳があり、それらには多くの注釈があるが、本書にはひとつもなく、読みやすい。
ひとつの文学としても読めるので、そのように読んでもよい。
なお教養として押さえておきたいという人は、本書岩波文庫の上巻(第一部・第二部)を読むだけで十分だろう。
[参考]
『ニーチェ全集9 ツァラトゥストラ 上』吉沢伝三郎訳(1993・ちくま学芸文庫)
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『ニーチェ全集10 ツァラトゥストラ 下』吉沢伝三郎訳(1993・ちくま学芸文庫)
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『ツァラトゥストラ』手塚富雄訳(1973・中公文庫)
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『ツァラトゥストラ』手塚富雄訳(改版2018・中公文庫)
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『ツァラトゥストラかく語りき』佐々木中訳(2015・河出文庫)
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『ツァラトストラかく語りき』(上下)竹山道雄訳(改版1953・新潮文庫)(文語体で難解な言葉が多い(らしい))
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下巻 amazon 楽天
『ツァラトゥストラ』(上下)丘沢静也訳(2010,2011・光文社古典新訳文庫)
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下巻 amazon Kindle 楽天 楽天kobo