2014年
457頁
昭和26~27年。山田風太郎が20代最後にして独身生活最後の2年間を精力的に過ごした2年間を綴っている。
〈夜、成城の横溝氏たずねのんでいるうち前後不覚、気がつくと、どこともしれぬ深夜の町をフラフラ歩いていた。眼鏡消失、額にけがして血だらけ、金も消失。さかんにお巡りにトッチメられ、朝ヘトヘトになってかえる(昭和26年3月9日)〉〈概していえば余は肉体でかく芸術家を軽蔑する。肉体でかく、とは肉体小説をかくという意味ではない。鈍で、ただ丈夫だけで押しまくるような作家である。小説でいえば田村泰次郎。余は頭でかく作家である。而して余は感性でかく作家には全面的に降服せざるを得ない。例えば太宰治(昭和27年5月10日)〉
終戦から6年、戦後日記の掉尾を飾るシリーズ第4弾。恋愛観・結婚観(昭和28年に結婚)も綴られ(略)創作活動や当時の文壇に対しての考察や批評なども折に触れて述べ、スキヤキ、すし、柳川鍋、印度カリーといった“その日食べたもの”から物価や税金までも克明に記されており、当時の生活資料としても興味深い内容
出典:小学館公式サイト
[関連]
『戦中派復興日記』山田風太郎(2005・小学館)単行本
amazon