『航西日記 パリ万国博見聞録 現代語訳』渋沢栄一・杉浦譲、大江志乃夫訳(講談社学術文庫)
2024年
192頁
目次(収録作品)
第1章 上海から香港へ
第2章 インド洋を航して紅海へ
第3章 スエズをこえてパリに入る
第4章 パリ宮廷の社交
第5章 ロシア皇帝狙撃事件
第6章 パリ万国博覧会を見る
第7章 博覧会の褒賞式
第8章 博覧会における日本の評判
第9章 スイスおよびオランダを見る
第10章 ベルギーおよびイタリーを見る
第11章 マルタ島を巡歴
第12章 イギリス巡歴の旅
付録 『渋沢栄一自叙伝』より 王政復古と帰朝
解説 近代日本への貴重な原体験 木村昌人
1867(慶応3)年、パリ万国博覧会が開催された。日本が初めて参加した国際博覧会であり、幕府は徳川慶喜の弟である昭武を公使として派遣した。使節団には幕臣となっていた渋沢栄一が随行。帰国後、渋沢は、外国奉行支配調役として同行した杉村譲(愛蔵)とともに、全6巻の詳細な渡欧記録をまとめ、1871年(明治4)に刊行した。
この記録には、フランスの繁栄を誇ったパリ万国博での見聞のほか、ナポレオン3世やイタリアのヴィットリオ・エマヌエレ2世、オランダ国王ウィレム3世ら欧州要人たちと徳川昭武の謁見、産業革命のただなかにあったイギリスの工業化や、政治・経済のシステムへの驚きなどが、生々しく描写されている。
従来、この日記は、渋沢の単著として扱われてきたが、近年の研究により、旅の前半を幕臣として同行し、後に明治政府の官僚となった杉村譲の日記と渋沢の日記から編纂・執筆されたものであることがわかってきた。こうした旧幕臣の体験と知識が、その後の近代化に大きく生かされたのである。文庫化にあたっては、『世界ノンフィクション全集14』(筑摩書房、1961年)所収の大江志乃夫現代語訳を原本とし、「付録」として、一行の帰国の事情と帰国後の動向を記した、渋沢栄一談/小貫修一郎編著『渋沢栄一自叙伝』(渋沢翁頌徳会、1937年刊)の13章1節から4節までを収録した。
出典:講談社BOOK俱楽部