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『詳説 日本史史料集 再訂版』(山川出版)

『詳説 日本史史料集 再訂版』(山川出版)

再訂版2007年
391頁
定価:723円(税込)




日本史の史料、頭注、口語訳(現代語訳)と解説で構成されている。

山川出版らしく、解説に偏った見方が散見されるが、全体的には日本史を学ぶには、おすすめの良書。
これと中学や高校や歴史の教書を並行して読むと、とても勉強になる。
格安でコスパは抜群。
索引がないのは、欠点。

おかしな点をいくつか指摘する。

(p.274)脱亜論(解説)
「朝鮮改革派を支援し(略)それまでのアジア盟主論を名目的にも捨てて、欧米列強とならんでアジア侵略への道を明示する。それが「脱亜論」である。」

「脱亜論」は、そんなことは言っていない。下記が主意である。

今の世界状況を見ると、好むと好まざると(西洋近代)文明を受け入れるしか道はない。
わが国は、開国し新政府を立て、文明を採った。
しかし、シナと朝鮮の二国はいまだ文明を受けいれず、旧態依然の体制だ。これでは、近いうちに西洋文明諸国に亡ぼされるに違いない。
シナと朝鮮が文明を受けいれ、近代化し、わが国とともにアジアを発展させてくれればよいが、両者はそのような態度を頑なにとらない。ゆえに、わが国は、この両国とは距離を置いて付き合うべきである。

(p.333)
「解説」で、日中戦争の状況を史料から見てみよう、と述べ「首都南京を占領し、南京大虐殺をおこす。」としている。これは「南京事件」が一般的な呼称である。また、その南京事件の史料は、本書にはない。史料から見ることはできないじゃないか。

(p.343,p.356)ヤルタ会談(ヤルタ協定)
「ソ連の対日参戦と樺太・千島のソ連帰属を定めたものであり、現在の北方領土問題についてソ連が解決済みと主張する根拠となっている。」

これはひどい。ソ連の立場でものを言っている。こう書くなら、ソ連はそう主張しているが、ヤルタ協定に法的根拠はなく、米国もソ連(ロシア)による北方領土の占領は不法であると上院で決議していることを明記すべきである。

(p.373)
「[日中国交正常化は]1972(昭和47)年田中角栄内閣によって日中共同声明で実現し、国交が正常化された。前文で、日本が侵略戦争の「責任を痛感し、深く反省」して、両国が戦争の終結を確認したことに留意しよう。」

これもひどい。「日中共同声明」には、こうある。「日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」。史料では、「侵略戦争」などとは言っていない。侵略戦争の定義とか、それをやったかやらなかったか等は、ここでは関係がない。史料にないことを言ってしまっている。念のために言っておくが、この文脈とは別に日本の侵略戦争云々と論じるのは(言論の)自由である。

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