2021年
232頁
目次(収録作品)
1 古典について(古典について―あるいは明治について)
2 受容の歴史(受容の歴史―日本漢学小史)
3 江戸の学者たち(仁斎と徂徠―「論語古義」と「論語徴」/伊藤仁斎/古義堂文庫/仁斎と小説/古義堂/伊藤仁斎の墓/二つの伊藤仁斎論―スパアとツァトロフスキ/伊藤東涯/安積澹泊/本居宣長―世界的日本人/一冊の本―本居宣長「うひ山ぶみ」/学問のかたち/中京の二学者―河村秀根と岡田挺之と/「息軒先生遺文続編」の序)
日本書紀の時代から、この国の基盤には大陸から摂取した文明の影響がありました。営々と築き上げられてきた日本の漢学文化は、中国古典の碩学、吉川幸次郎(1904-80年)の目にどのように映じていたのでしょうか。
ふとしたことで手にした本居宣長『うひ山ぶみ』によって、宣長の「信徒」となったと告白する著者は、江戸時代に日本の漢学の全盛を見ます。伊藤仁斎や荻生徂徠を生んだ元禄・享保期の儒学と、戴震や段玉裁、王念孫ら清朝の儒学に共通性を見出して、それを「近世の覚醒」と名付け、日本における覚醒が実は100年近くも大陸に先んじていたことを指摘します。
江戸時代に頂点を極めた漢学が、明治になって文化そのものが根本から変容していくことを万葉集の偏重に象徴的に見る第1部「古典について」、古代から江戸末期にいたる日本の漢学受容という類のない通史をコンパクトに描いた第2部「受容の歴史」、そして著者が愛してやまない儒者たちを素描した第3部「江戸の学者たち」。日本思想の基層をなす漢学という視座から、この国の学問的伝統を再発見する極上の教養書です!出典:講談社BOOK俱楽部
原本は、『古典について』(1966・筑摩書房)
[関連]
『古典について』吉川幸次郎(復刊1985・筑摩書房)
amazon