『中井久夫コレクション 世に棲む患者』中井久夫(ちくま学芸文庫)シリーズ全5冊
2011年
338頁
目次(収録作品)
1 (世に棲む患者/働く患者ーリハビリテーション問題の周辺)
2 (統合失調症をめぐって(談話)/対話編「アルコール症」/慢性アルコール中毒症への一接近法(要約)/説き語り「妄想症」-妄想と権力 ほか)
3 (医療における人間関係ー診療所医療のために/医師・患者関係における陥穽ー医師にむかって話す/医療における合意と強制/精神病的苦悩を宗教は救済しうるか)
「病気をとおりぬけた人が世に棲む上で大事なのは、その人間的魅力を摩耗させないように配慮しつつ治療することであるように思う」。治療者はもちろん、病者も社会の中で生きてゆかねばならない。しかも、病の進行あるいは治療の過程に伴って、その関係の変数は多様化し、無限に変化していくことになる。では、「治療者というものは、常識と社会通念とを区別して考えるべきである」とする著者は、具体的にどう対処してきたのだろうか。アルコール依存症、妄想症、境界例など身近な病を腑分けし、社会の中の病者と治療者が織りなす複雑で微妙な関わりを、豊かな比喩を交えて描き出す。
出典:筑摩書房公式サイト