『小泉八雲東大講義録―日本文学の未来のために』ラフカディオ・ハーン、 池田雅之編訳(角川ソフィア文庫)
2019年8月25日初版発行
400頁
目次(収録作品)
第一章 文学の力
西洋文学における女性像――日本人の克服しがたい難問
至高の芸術とは何か
赤裸の詩
文学と世論
ロマン主義的なものと文学的保守主義
第二章 文学における超自然的なもの
文学における超自然的なものの価値
詩歌の中の樹の精
妖精文学と迷信
第三章 生活の中の文学
生活と文学の関係
読書について
文章作法の心得
第四章 ロマン主義の魂――日本文学の未来のために
シェイクスピアの再発見
イギリス最初の神秘家ブレイク
自然詩人ワーズワス
コールリッジ――超自然の美学
日本文学の未来のために――最終講義
解説――語り部のかたりなす文学講義(池田雅之)
まだ西洋というものが遠い存在だった明治期、将来、日本の学問や文学を背負って立つ学生たちに深い感銘と新鮮な驚きを与えた、最終講義を含む名講義16篇。生き生きと、懇切丁寧に、しかも異邦の学生たちの想像力に訴えかけるように、文学の価値とおもしろさを説いて聴かせる。ハーン文学を貫く、内なるghostlyな世界観を披歴しながら、魂の交感ともいうべき、一期一会的な緊張感に包まれた奇跡のレクチャー・ライブ。
出典:小学館公式サイト
本書は、『さまよえる魂のうた』(ちくま文庫)から、ハーンが東京帝国大学で行った講義録16篇を選び、大幅に改訳・修正し新編集したもの。
筆者は、大学の文学科の講義を聴いたことはないが、ハーンの講義は現代および当時の一般的なものとは、まるで違うものだろう。講義らしくはなく、明快な評論のようである。
約120年前の講義がいまも古びていなく読めるのは驚異ではあるが、全体的にはいまひとつである。「読書について」と「文章作法の心得」は、なかなかだったが。
小泉八雲の最初の一冊としては、おすすめしない。実作を読むのがよい。
まず『Glimpses of Unfamiliar Japan』をおすすめする。『知られぬ日本の面影』、『日本瞥見記』、『日本の面影』などのタイトルで邦訳されている。手に入りやすいのは『新編 日本の面影』(角川ソフィア文庫) 。
[関連]
『さまよえる魂のうた 小泉八雲コレクション』小泉八雲、池田雅之編訳(2004・ちくま文庫)定価:1,300円(税別)
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