『日本人はなぜ戦後たちまち米国への敵意を失ったか』西尾幹二、路の会(徳間書店)
2002年8月31日第1刷
316頁
本書は、言論人たちの勉強会「路の会」でなされた討論をまとめたもの。
以下の人たちが、参加している。
西尾幹二、大島陽一、井尻千男、宮崎正弘、高森明勅、遠藤浩一、尾崎護、田中英道、西岡力、片岡鉄哉、小浜逸郎、藤岡信勝、黄文雄、萩野貞樹、小田村四郎、東中野修道、高橋史朗、石井公一郎、小田晋、呉善花。
本書タイトルをテーマに様々なことがそれぞれの専門から論じられていて興味深い。考えるヒントとしてもよい、なかなかおすすめの書。
小田晋と萩野貞樹は、物事をコンプレックスで説明していて論外。(それだと自分の都合よくなんでもコンプレックスで説明できてしまう)
小田村四郎:
(p.91)
ポツダム宣言はあくまでも条件付降伏であって、日本政府はそのポツダム宣言の履行について連合軍の占領司令部と交渉ができるという考え方でした。これは政府が外務省を含めて全部、そういう考え方であったと思います。(p.95,p.96)
これは八月九日の御前会議で阿南陸軍大臣が心配した予想が的中したわけです。しかし、それに対して東郷外務大臣が言いました。「そんなことはない。無条件降伏というのは軍隊の無条件降伏であって政府ではない。日本政府は何々せよということを言っているから、日本政府を認めることを意味する」。それから「民主主義的傾向の復活強化」と書いてある。ということは、民主主義がかつて日本にもあったということを彼らは認めているわけで、大正デモクラシー的なものに戻ればいいのだということです。
占領地も「ポインツ」(諸地点)という言葉でして、あのような全国的な占領になるとは当時考えていませんでしたから、とにかく占領軍に対しては誠実に協力しようという気持ちでいたと思います。しかし、初めからあのような占領政策になるということがわかっていたら、阿南さんの議論に反対する人間はおそらくいなかっただろうし、最後まで戦ったと思います。
[関連]
『沈黙する歴史』西尾幹二(国書刊行会)