2019年
344頁
目次(収録作品)
序
日本語版への序文
第一章 執拗につきまとう諸問題
第1節 法理論の困惑
第2節 繰り返し見られる三つの論点
第3節 定義
第二章 法と命令
第1節 命令法の多様性
第2節 強制的命令としての法
第三章 法の多様性
第1節 法の内容
第2節 適用の範囲
第3節 起源の態様
第四章 主権者と臣民
第1節 服従の習慣と法の継続性
第2節 法の永続性
第3節 立法権に対する法的制度
第4節 立法府の背後にある主権者
第五章第一次的ルールと第二次的ルールの結合としての法
第1節 新たな出発
第2節 責務の観念
第3節 法の諸要素
第六章 法体系の基礎
第1節 承認のルールと法の妥当性
第2節 新しい諸問題
第3節 法体系の病理学
第七章 形式主義とルール懐疑主義
第1節 法の開かれた構造
第2節 ルール懐疑主義の多様性
第3節 司法的決定の最終性と無謬性
第4節 承認のルールの不確定性
第八章 正義と道徳
第1節 正義の諸原則
第2節 道徳的および法的責務
第3節 道徳的理想と社会的批判
第九章 法と道徳
第1節 自然法と法実証主義
第2節 自然法の最小限の内容
第3節 法的妥当性と道徳的価値
第十章 国際法
第1節 疑いの源
第2節 責務と制裁
第3節 責務と国家の主権
第4節 国際法と道徳
第5節 形式と内容における類似
原注
訳者解説
邦語参考文献
本書に対する批判的著作
1961年に初版が刊行された本書は、法理学、法哲学の基本的著作として、読み継がれている。
著者は法の定義づけより、むしろ法の解明を意図している。法律上の種々の概念および問題の一般的なパースペクティヴを提供するため、法体系の構造分析に加えて、法を成立させる社会現象に注目し、法・強制・道徳のような型の相互の類似点、相違点に照明をあてる。人間が自ら生存を欲する限り、最小限の自明な事実はつぎのような点にあるであろう。1. 人間の傷つきやすさ。2. おおよその平等性。3. 限られた利他主義。4. 限られた資源。5. 限られた理解力と意思の強さ。初めの3点は人間的自然の事実で静的なルールの世界であるが、4. は社会的自然でここで人間は分業・交換・約束・責務を発生させ、動的なルールの世界となる。5. の状況下で「制裁」が本質的必要物となる。こうした提示が鋭く手堅い論理で展開されてゆく。
その後、道徳哲学、政治哲学、社会学にも影響を与え、ドゥオーキン、ロールズ、ノージックとの論争の出発点となった。出典:みすず書房公式サイト
[関連]
『法の概念』H・L・A・ハート、矢崎光圀訳(1976・みすず書房)
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『法の概念 第3版』H・L・A・ハート、長谷部恭男訳(2014・ちくま学芸文庫)