『民間防衛 あらゆる危険から身をまもる』スイス政府編(原書房)
2021年5月15日新装版
319頁
定価:1,650円(税込)
目次(収録作品)
平和
戦争の危険
戦争
戦争のもう一つの様相
レジスタンス(抵抗活動)
知識のしおり
東西冷戦中の1969年に、スイス政府が有事に備えるために全家庭に配布した危機管理マニュアル。反共産主義に基づいて書かれている。
平時、戦争の危機の高まり、侵略などの一連の過程を時系列で、短いエピソードを連ね叙述している。
防衛に対する心構え、敵のやり口など重要な指摘がある。敵の浸透工作に対する心構えについては、傾聴に値する。また、戦時国際法の重要点について書かれているのはすばらしい。なかなか勉強になった。
ただ、冗漫ではないが、丁寧に描きすぎていて読みにくい嫌いがある。本書を引き締めた本があるとよい。
(p.13)
自由と独立は、われわれの財産の中で最も尊いものである。――自由と独立は、断じて与えられるものではない。
自由と独立は、絶えず守らねばならない権利であり、ことばや抗議だけでは決して守り得ないものである。手に武器を持って要求して、初めて得られるものである。
(p.228)
国を内部から崩壊させる活動は、スパイと新秩序のイデオロギーを信奉する者の秘密地下組織をつくることから始まる。(略)
彼等の餌食となって利用される「革新者」や「進歩主義者」なるものは、新しいものを待つ構えだけはあるが、社会生活の具体的問題の解決には不慣れな知識階級の中から、目をつけられて引き入れられることが、よくあるものだとうことを忘れてはならない。
数多くの組織が、巧みに偽装して、社会的進歩とか、正義、すべての人人の福祉の追求、平和というような口実のもとに、いわゆる「新秩序」の思想を少しずつ宣伝していく。この「新秩序」は、すべての社会的不平等に終止符を打つとか、世界を地上の楽園に変えるとか、文化的な仕事を重んじるとか、知識階級の耳に入りやすい美辞麗句を用いて……。
(p.319 訳者あとがき)
一方の国[スイス]では、平時から、戦時に備えて2年間分位の食料、燃料等必要物資を貯え、24時間以内に最新鋭の武器を具えた約50万の兵力の動員が可能という体制で平和と民主主義を守り、他方の国[日本]では、軍事力を持つことは民主主義に反するというような議論が堂々となされているのは、まことに奇妙といわざるをえない。
あらゆる危険に備える平和愛好国家と、いかなる危険にも目もくれない平和愛好国家!