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『国民の油断』西尾幹二・藤岡信勝(PHP文庫)

『国民の油断』西尾幹二・藤岡信勝(PHP文庫)

2000年5月15日初版発行
352頁




目次(収録作品)

第1章 これでわかるか! 明治維新と日本の近代化―国家の目的を描かない「無目的」史観
第2章 「何でも反対」史観の人間不在―外国の利益に生きるわが国の教科書
第3章 日清・日露まで侵略とする「戦争=罪悪」史観―国際力学を無視した自虐心理
第4章 ソ連崩壊にも懲りない社会主義幻想―時代遅れの学説で綴られる「独断」史観
第5章 英米が絶対正義で、日本を犯罪国家とする「片面」史観―人間は、これで誇りを持って生きられるか
第6章 歴史的事実が確定していないことを書く「雰囲気」史観―従軍慰安婦と南京大虐殺
第7章 国民の油断―なぜ、こんなことになったのか
第8章 採択制度を変えれば教科書は変わる―教科書を良くするもしないも教育委員会の立ち直りいかん

資料1 戦後の教科書をめぐる動きと関連事項
資料2 本書でとりあげた歴史教科書著者一覧

本書は、『国民の油断』(1996)に、新たに第8章「採択制度を変えれば教科書は変わる」および資料年表を増補し文庫化したもの。

我が国の偏向した歴史の教科書(中学の社会科教科書)を批判した書。対談本のくくりになっているが、本書はふつうの対談本の形式ではなく、交互に論じるかたちになっていて、分かりやすい。
問題のある教科書の実際のページの写真も示して真っ当な批判をおこなっている。教科書のその説明が、なぜおかしいのかを論じ解説しているので、近現代史の勉強にもなる、内容の濃い質の高い本である。
古い本だが、歴史教科書問題を知るうえでの筆頭の良書である。(が、今も本書がそういう存在なのは嘆かわしい。問題が解決していないということだから)

巻末の「資料1」も歴史教科書問題の流れをそつなくまとめていてよい。
おすすめの一書。

勉強になった重要な指摘を一つ引用。

(p.138)
共産主義の「犯罪」は書かない

どの教科書にもカンボジアでのポル・ポトの大量虐殺が一言も載っていない(略)
ナチスのユダヤ人虐殺について言葉を尽くし、日本の南京事件をさながらナチスの残虐行為と同じように取り上げて強調しているのに対し、二、三百万人に及ぶポル・ポトの大量虐殺が一言も述べられていないのはまことにおかしい。(略)
ソビエトの強制労働の実態と集団殺戮の実態、マオイズムといわれた毛沢東の犯罪など、[も]書かれていません。

2020年3月現在でも、ざっと確認したところ「自由社」の教科書以外には、ポル・ポトの虐殺の記載はない模様。

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