『グーテンベルクの銀河系―活字人間の形成』マクルーハン、森常治訳(みすず書房)
1986年
528頁
目次(収録作品)
グーテンベルクの銀河系(リア王が/人間は剥奪されることで/第三次元の苦悩は、『リア王』の/表音文字技術が精神構造として/精神分裂病は文字使用の/「文字」のようなメディアの/文明は未開人、もしくは部族的人間に/現代の物理学者にとって/電子技術による新しい相互依存は/文字使用はアフリカ人の ほか)
再編成された銀河系またの名、個人主義社会における大衆状況
グーテンベルクによる印刷技術の発明は、人間の歴史と文化にたいし、いかなるインパクトを与えたか。書物(活字)を読むという行為は、人間の知覚=精神をどのように変容させたのか。口語文化と活字文化はどう違うのか。本書は、これらの疑問にたいするマクルーハンの詩的洞察に満ちた応答である。著者は、西欧近代の形成において印刷技術が果たした決定的な役割を詳細に検証してゆく。ホメロス、シェイクスピアはもとより、ポープ、ジョイスからド・シャルダン、さらにはダンチッヒにハイゼンベルクまで、古今東西にわたる博引傍証によって、活版印刷をめぐる壮大な《グーテンベルクの銀河系》が描き出される。部族共同体の時代から中世・ルネッサンスを経て近代に至る広大な歴史の流れのなかで、活字(書物)が視覚強調を促進することで聴覚・触覚を抑圧し、近代のテクノロジー・個人主義・ナショナリズム等を形成したプロセスをモザイク的方法によって浮き彫りにしてゆく。活字文化と電気=電磁波テクノロジーによる文化(映画・テレビ等)が競合している今日、活字文化を再考し、新しい文化創造を構想する上で、本書は、ブレイクにも似た予言者の書といえよう。
出典:みすず書房公式サイト