『唐宋伝奇集』(上下)(岩波文庫)
『唐宋伝奇集 上 南柯の一夢 他十一篇』今村与志雄訳
1988年
300頁
目次(収録作品)
白い猿の妖怪――補江総白猿伝(無名氏)
倩娘の魂――離魂記(陳玄祐)
邯鄲夢の枕――枕中記(沈既済)
妖女任氏の物語――任氏伝(沈既済)
竜王の娘――柳毅(李朝威)
紫玉の釵――霍小玉伝(蒋防)
南柯の一夢――南柯太守伝(李公佐)
敵討ち――謝小娥伝(李公佐)
鳴珂曲の美女――李娃伝(白行簡)
夢三題――三夢記(白行簡)
長恨歌物語――長恨歌伝(陳鴻)
鶯鶯との夜――鶯鶯伝(元稹)
『南柯の一夢』の主人公は官僚を嘲笑する自由人である。そういう男が役人になって栄達の限りをつくし、得意と失意をたっぷりと味わう。味わったところで夢からさめ、槐の根もとを堀るとどうだろう、夢みたとおりの小さな蟻の王国があったのだ。唐代伝奇の面白さは、幻想を追っているようで実は深く現実の人間の本質をついているところにある。(全2冊)
本書表紙(カバー)より
『唐宋伝奇集 下 杜子春 他三十九篇』今村与志雄訳
1988年
384頁
杜子春(牛僧孺)
杵,燭台,水桶,そして釜――元無有(牛僧孺)
みかんの中の楽しさ――巴邛人(牛僧孺)
冥界からもどった女――斉饒州(牛僧孺)
同宿の客――辛公平上仙(李復言)
魚服記――薛偉(李復言)
赤い縄と月下の老人――定婚店(李復言)
則天武后の宝物――蘇無名(牛粛)
竜女の詩会――許漢陽(谷神子)
飛天夜叉――薛淙(谷神子)
白蛇の怪――李黄(谷神子)
碁をうつ嫁と姑――王積薪(薛用弱)
玻璃の瓶子――胡媚児(薛漁思)
女将とろば――板橋三娘子(薛漁思)
山の奥の実家――申屠澄(薛漁思)
蒼い鶴――戸部令史妻(戴孚)
巨獣――安南猟者(戴孚)
鄭四娘の話――李(戴孚)
嘉興の綱渡り――嘉興縄技(皇甫氏)
都の儒士――京都儒士(皇甫氏)
腕だめし――僧侠(段成式)
旁とその弟――新羅(段成式)
葉限――中国のシンデレラ(段成式)
形見の衣――陳義郎(温庭筠)
再会――楊素(孟棨)
崔護と若い娘――崔護(孟棨)
麺をとかす虫――消麺虫(張読)
李徴が虎に変身した話――李徴(張読)
崑崙人の奴隷――崑崙奴(裴鉶)
空を飛ぶ侠女――聶隠娘(裴鉶)
女道士魚玄機――緑翹(皇甫枚)
犬に吠えられた刺客――李亀寿(皇甫枚)
詩人の男伊達――張祜(馮翊子)
奇譚二則――画工・番禺書生(逸名)
つばめの国の冒険――王榭(逸名)
真珠――狄氏(廉布)
日銭貸しの娘――大桶張氏(廉布)
居酒屋の女――呉小員外(洪邁)
壁に書かれた字――太原意娘(洪邁)
怪盗我来也――我来也(沈俶)
唐宋伝奇の源流は六朝時代の怪異譚に求められるが,唐代になると,意識的に奇異なものを追求して曲折に富む複雑な筋立てにし,修辞にも凝るようになる。こうして文学と呼ぶにふさわしい創作ジャンルが確立する。武田泰淳は,これを,ヨーロッパの近代的短篇にも劣らぬ,常に新しさを失わぬ芸術品の結晶であるといった。
本書表紙(カバー)より