『本当に日本人は流されやすいのか』施光恒(せ・てるひさ)(角川新書)
2008年5月10日初版発行
263頁
目次(収録作品)
第1章 同調主義的で権威に弱い日本人?
第2章 日本文化における自律性―ベネディクト『菊と刀』批判を手がかりに
第3章 改革がもたらす閉塞感―ダブル・バインドに陥った日本社会
第4章 「日本的なもの」の抑圧―紡ぎだせないナショナル・アイデンティティ
第5章 真っ当な国づくり路線の再生
著者は政治学者。
今日の日本の「閉塞」は、グローバル化のながれに沿った1990年代半ばからの構造改革が原因である。
我が国には欧米とは異なった自己観、自律性などがある。社会が欧米式になると、求められる言動や生きかたと日本人の内にある価値観や自己観に齟齬が生じ(大きくなり)、それが日本の「閉塞」を生み出している。「引きこもり」も、そこに原因があるのではないか、というのが、本書の主な論旨。
(書名は、あんまり内容を表してはいない。)
我が国のナショナル・アイデンティティーの不安定さについて、ホラー小説の『リング』を例に考察している所(p.161-p.193)は、興味深い。貞子を「日本的感受性の象徴」として論じているのは面白い。