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『浦島太郎の文学史』三浦佑之(五柳書院)

『浦島太郎の文学史―恋愛小説の発生』三浦佑之(みうら・すけゆき)(五柳書院)

単行本・ハードカバー

平成元年(1989)11月28日初版発行
222頁



著者は国文学者。

書名の通りの内容の本で「浦島物語」について考察している。

第一章では、われわれが知っている昔話「浦島太郎」のルーツは明治期に小学校で使われていた国定教科書であること論じる。また、太宰治の「浦島太郎」(『お伽草子』)について、それから浦島太郎の唱歌について(すこし)考察している。

そして、国定教科書・浦島のさらなるルーツは巌谷小波の『日本昔噺』の「浦島太郎」であることを確認する。

第二章では、『日本書紀』『丹後国風土記』『万葉集』に記された浦島子(浦島太郎)を考察し、それらにシナの神仙思想の影響があることを論じる。

また、伊預部馬養(いよべのうまかい)(『丹後国風土記』に「浦島子物語」を記したと書かれている人物。彼が記したという「浦島子物語」は現存していない)について考察している。

第三章では、シナの神仙小説(神仙思想を基にして書かれた伝奇小説)と我が国古代の浦島子物語との関わりを論じる。そして、浦島説話は古くから土地に伝承されてきた説話で、それを持統・文武朝時代の人物である伊預部馬養が(潤色を加え)採録したというのが通説なのだが、そうではなく馬養が創作した神仙伝奇小説であると結論付ける。理由は、そのような地域の伝承を示すような痕跡はどの浦島子(『日本書紀』『丹後国風土記』『万葉集』など)にも見られないから。

第四章では、中世小説(お伽草子)における浦島物語を論じる。

以上が、本書のだいたいの内容。
このような研究は多くが状況証拠に基づく推論・推断なのでなんとも言えない面がけっこうある。仮定に仮定を重ねているので、そのような論法が嫌なひとにはつらいかもしれない。

「浦島物語」を研究する人は、必読。

『丹後国風土記』に記された浦島子の物語の全文の訓み下し文と口語訳(現代語訳)があるのがよい。
ネットにも公開されているが。
「浦島子」の伝承『丹後国風土記』逸文 (三浦佑之)

[参考]
『玉手箱と打出の小槌』浅見徹(中公新書)

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