2019年
264頁
定価:748円(税込)
目次(収録作品)
序章 捕虜第一号
第1章 米軍の対日諜報システム
第2章 日系二世の秘密戦士たち
第3章 ずさんな日本軍の情報管理
第4章 ガタルカナル戦線
第5章 ニューギニア、フィリピン戦線
第6章 中国、ビルマ、インド戦線
終章 捕虜と日本占領
著者は、歴史学者。
先の大戦における、日米の諜報について論じた本。
硬めの大学の講義のような調子。わが国の情報管理の杜撰さには、考えさせられるものがある。また、あとがきの著者の指摘は重要で傾聴に値する(下記)。
インテリジェンス等に関心のある人には、そこそこおすすめ。
ところで、事件や出来事などの「主語」がない(明確でない)記述が、散見されるのが気になった。一つだけ引用する。
(p.179)
朝鮮人女性二十三人のうち、一人以外は強制と欺瞞によって慰安婦にさせられたことは明らかであった。たとえば一九四三年七月に韓国を離れた十五人は、シンガポール日本工場の女工募集広告を韓国内の新聞で見て、応募している。その際、少なくとも三百人が応募して、南方に向かったが、彼女たちも全員だまされていた。
「誰」が騙したのだろうか。
あとがき(p.189)
OSSの後身のCIAも日本の国防ばかりか企業の機密情報の収集でアメリカ企業を支援してきた。
敗戦後五十六年をへて、二十一世紀を迎えた現在まで、われわれは戦時期の日本兵捕虜による情報流出の問題の検討を怠っていた。アメリカ軍の対日諜報システムは現在も生きている。(略)それへの認識なくして日本は占領状態いや捕虜の状態を脱却できないと言って過言でない。