『日本語に探る古代信仰―フェティシズムから神道まで』土橋寛(つちはし・ゆたか)(中公新書)
1990年4月25日初版発行
217頁
目次(収録作品)
1 呪術・宗教と霊魂観念―日本語は語る
1 原始宗教に関する諸問題
2 霊魂と生命
3 神聖とは何か-「イ」「ユ」をめぐって
2 呪物崇拝と呪力信仰
1 自然と人間
2 花見・山見の呪術的意義
3 白鳥・鷺・白馬の呪力信仰
4 邪眼と慈眼
5 呪物崇拝と呪的・宗教的儀礼
6 三種の神宝
3 日本の神と霊力
1 カミとモノ・オニ
2 神社の祭神と司祭者
3 神名の核をなす霊力
4 神名の核にならない霊力-カ、ケ、カゲという語
4 コトバの呪術と宗教
1 呪詞とその起源
2 言語呪術としてのウケヒ
3 祝詞-神にイノル言葉
著者は、日本文学者。古代歌謡などが専門。
書名通りの本。古代の和歌や語からその信仰を「探って」いる。当然、古代は分からないことだらけなので、本書で古代信仰が具体的によくわかるわけではない。
古代の言葉に興味がある人にはおすすめ。研究する人は必読。
軽く興味のある人は、3章3節(p.134-p.157)だけ読めばよい。ここだけ読んでも本書のエッセンスが得られる。
文章は難しくはないが、引用の万葉の和歌や漢文などの説明は最小限なので、その点で読みづらさがあるかもしれない。
また、ルビがきちんと付されていないのはよくない。多数あるが、一例をあげれば「幡」という字は、おそらく文脈的に「のぼり」と読むのだろうけど、この字は「はた」とも読む。このようなものは、すべてルビを付すべきである。
もし、『古事記』を読んでいないなら、本書より先に『古事記』を読んだ方がよい。