『墓標なき草原―内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(上下)楊海英(岩波現代文庫)
上巻 2018年・384頁
目次(収録作品)
はじめに――内モンゴルの文化大革命に至る道
序章 「社会主義中国は,貧しい人々の味方」――中国共産党を信じた牧畜民バイワル
第Ⅰ部 「日本刀をぶら下げた連中」
第1章 日本から学んだモンゴル人の共産主義思想―― 一高生トブシン,毛澤東の百花斉放に散る
第2章 「亡国の輩になりたくなかった」――満洲建国大学のトグスの夢
第3章 「モンゴル族は中国の奴隷にすぎない」――「内モンゴルのシンドラー」,ジュテークチ
第Ⅱ部 ジュニアたちの造反
第4章 「動物園」の烽火――師範学院のモンゴル人造反派ハラフー
第5章 陰謀の集大成としての文化大革命――師範大学名誉教授リンセの経験
第6章 漢人農民が完成させた「光栄な殺戮」――草原の造反派フレルバートル
下巻
第Ⅲ部 根元から紅い延安派
第7章 モンゴル人を殺して,モンゴル族の人心を得る――延安派に嫁いだオルドス・モンゴル人女性奇琳花
第8章 「モンゴル人虐殺は正しかった」――所詮は「地方民族主義者」にすぎぬ「延安派」オーノス
第9章 「モンゴル人がいくら死んでも,埋める場所はある」――大沙漠に散った延安派幹部アムルリングイ
第Ⅳ部 トゥク悲史――小さな人民公社での大量虐殺
第10章 「文明人」が作った巨大な処刑場――トゥク人民公社の元書記ハスビリクトの経験
第11章 「中国ではモンゴル人の命ほど軽いものはない」――家族全員を失ったチムスレン
第12章 「モンゴル人が死ねば,食糧の節約になる」――革命委員会主任エルデニの回想
終章 スケープゴートもモンゴル人でなければならない――息子が語る「抗日作家」の父ウラーンバガナ
視座 ジェノサイドとしての中国文化大革命
おわりに――オリンピック・イヤーの「中国文化大革命」
解説(藤原作弥)
内モンゴル自治区文化大革命年表
他に先がけて文革の火蓋が切られた内モンゴルでは,かつて日本時代に教育を受けた者たちが「内モンゴル人民革命党」一派として粛清され,階級闘争論によって漢族による草原の開墾とモンゴル族の迫害が正当化され,略奪と殺害がエスカレートしていく.悲劇の実態を,体験者の証言を軸に克明にたどる.第14回司馬遼太郎賞受賞作,待望の文庫化.
出典:岩波書店公式サイト
[関連]
『墓標なき草原―内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』楊海英(2009・岩波書店)
上巻・276頁
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下巻・289頁
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『続 墓標なき草原―内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』楊海英(岩波書店)
2011年
352頁
定価:3,200円(税別)
目次(収録作品)
殖民地主義の観点から見る民姿史
第1部 民族の集団的な記憶
(モンゴル人に設けられた長い牢獄―狙い撃ちされたモンゴルの名門/草原に消えた日本の記憶―『人民日報』の記者チンダマニ、毛澤東の「陽謀」に抗す/頭上に吊るされた無形の刀―フルンボイル草原の殺戮の嵐を生きたピルジド/農耕文明の「優越性」がもたらした虐殺―文明の衝撃の目的者、バヤジホ)
第2部 処刑室となった人民公社
(「中国語が話せない者は、民族分裂主義者だ」-ケイルブが経験したトゥク虐殺/「漢人たちの玩具にされた」モンゴル人―ソブトダライの回想/作られたモンゴル人の「罪」-バヤンスレンとデチン夫妻の証言/陰謀に長けた隣人―ジェリム盟の造反派リーダー、エルデニ)
文化的ジェノサイドの時代/「草原の墓標」から「墓標なき草原」へ―「あとがき」に代えて
前著『墓標なき草原』と同様,全モンゴルがキリングフィールドと化した実態を,被害者の証言を通し明らかにする.同時代資料を充実させ,最新の歴史研究や民族理論を押さえ,殖民地主義批判の視座を一層クリアに打ち出す.「解放」「文明」「開発」の美名のもとに,漢族によって搾取され抑圧され差別されてきたモンゴル人の歴史.
出典:岩波書店公式サイト