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『浦島太郎の日本史』三舟隆之(吉川弘文館)

『浦島太郎の日本史』三舟隆之(吉川弘文館)

2009年12月1日初版発行
221頁




目次(収録作品)

さまざまな浦島太郎―プロローグ

古代浦島説話の成立と説話の源流
 『日本書紀』の浦島説話
 『丹後国風土記』の浦島説話
 『万葉集』の浦島説話
 神仙思想の受容
 浦島説話の源流

浦島説話の展開と浦島太郎の登場
 『浦島子伝』の成立―平安時代の浦島説話
 和歌の世界の浦島説話
 浦島太郎の登場―中世の浦島説話
 芸能と信仰の中の浦島太郎

庶民の浦島太郎―江戸時代の浦島太郎
 浦島伝承の広がり
 近世文学の「浦島太郎」
 
浦島太郎の近代化
 浦島太郎の文明開化
 明治・大正文学の「浦島太郎」

浦島太郎の未来―エピローグ


著者は、日本史研究者。
目次に示したように「浦島説話」を古代から順に、中世、近世、そして昭和の『お伽草紙』(太宰治)の「浦島さん」までまとめた本。
「浦島説話」が『日本書紀』や『万葉集』にまでさかのぼれるのを知らない人には、本書の中世まではなかなか興味深く読めると思う。ただ、本書は「浦島説話」の「歴史」をまとめたもので、著者の面白い解釈や鋭い分析などはない。

なお、「浦島説話」については下記のサイトがくわしい。
「浦島説話研究所R」(リンク切れ)

「浦島説話研究所R」

気になった点。

(p.196)

富国強兵政策に最も必要なのは、軍事予算を拠出する揺るぎない租税制度と殖産興業と、軍隊の基礎を成す、徴兵令によって徴兵された兵隊であった。そのどれも、国民が担い手であった。(略)
明治三十七年、日本はロシアとの戦争に突入する、帝国主義国家となった日本は、この後東アジアを侵略していくのである。

この文章から著者の歴史認識がうかがえる。それは、我が国は国民を犠牲にして「侵略」という罪を犯したというものだろう。(こういう認識の人は多い)。それは(一面の)「事実」ではあるが、筆者は全体としては正しい認識だと思わない。我が国には、当時、他国からの侵略の脅威があったのである、その為に富国強兵が必要だったのだ。なので、その侵略から身を守るための行動は「防衛」である。そして、物事は複雑でその「防衛」がある面では「侵略」になることもある。この点を考えに入れないで単純に考えるのはおかしい。

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