『連想実験』C.G. ユング(カール・グスタフ・ユング)、林道義訳(みすず書房)
新装版2000年
259頁
目次(収録作品)
1 連想実験の方法
2 精神分析と連想実験
3 家族的布置
4 癲癇患者の連想の分析
5 連想実験における再生の乱れについて
6 コンプレックス概論
7 コンプレックス総論
ユングを一躍有名にしたのは、連想実験の研究だった。彼自身『ユング自伝』の中で「私の学術的な仕事は1903年の連想実験に始まる」と述べている。本書は連想実験に関する基本的で、かつまた興味深い事例を含む7論文を収録する。まさに初期ユングの華ともいうべき書であろう。
ユング以前の連想実験は、言葉への反応時間の多少によって知能の性能や程度を測定するために使われていた。実験の結果は数学的に処理され、平均値が重視された。しかし実験の対象としての心は、いろいろな「乱れ」をみせて、実験のめざす平均の数値を変えてしまう。ユングは他の人が実験の誤りと見たこの「乱れ」に注目し、実験を乱すものこそが無意識のコンプレックスであることを発見した。
ユングの開発した100の刺激語による連想実験は、コンプレックスの存在とその種類とを簡単に、目に見える形で表わすことができる。看護婦のハンドバッグ盗難事件を連想実験によって解決した例など、思わず引き込まれてしまう。本書は、無意識の働きをユングと共に体験させてくれる希有な書といえよう。
出典:みすず書房公式サイト