『古代社会と浦島伝説』(上下)水野祐(雄山閣出版)
『古代社会と浦島伝説(上)第1部 浦島伝説の歴史的形成』
1975年2月10日初版発行
277頁
目次(収録作品)
第1章 緒論
1 神話・伝説・歴史
2 伝説の主人公の姓名
3「浦嶼子」名義考
第2章 日本最古の浦嶼子伝説
1『丹後国風土記逸文』に見える浦嶼子伝説
2 伊預部馬養連
3『日本書紀』に見える浦嶼子伝説
4『万葉集』に見える浦嶼子伝
5 古伝説間の異同とその本質
第3章 浦嶼子伝説の史的変遷
1 平安時代における浦嶼子伝説
2 中世における浦嶼子伝説
3 近世・近代における浦嶼子伝説
4 浦嶼子伝説の原形
第4章 浦嶼子伝説の系統
1 日本古典に見える類型的伝説
2 沖縄の浦嶼子伝説
3 南方圏の浦嶼子伝説
4 大陸の浦嶼子伝説
5 浦嶼子伝説の系統
引用史料原文集成(下巻引用史料を含む)
『古代社会と浦島伝説(下)第2部 伊勢神宮の創祀と古代漁撈文化』
1975年4月10日初版発行
366頁
第1章 丹波系氏族と浦嶼子伝説
第2章 日本古代漁撈文化の概要
第3章 日本における海女文化の展開
第4章 伊勢神宮の祭祀と浦嶼子伝説
第5章 結論
著者は歴史学者。(1918-2000)
本書は「浦島太郎」で有名な浦島伝説を詳しく考察したもの。上下巻だが、実質的には両者は別の本と言ってよい。
上巻は、浦島伝説を時系列順に論じており、第4章では沖縄・台湾・インドネシア等の浦島伝説に類似する伝説も扱っていて興味深い。綿密な研究で浦島伝説に興味がある人にはおすすめの一書。前提知識として『古事記』は読んでおきたい。
研究する人は必読必携の基礎的文献である。上巻だけでも入手しやすいかたちでの復刊が望まれる。
上巻は、少し専門的ではあるが一書の読み物として読めるが、下巻は各事柄の詳細な考察で、専門的な論文である。章ごとのテーマを細かく論じている。第1章は氏族、第2章は日本の古代の漁撈、第3章は海女、第4章は伊勢神宮の祭祀と古代の海女文化の関わりについて主に論じている。それぞれのテーマを研究する人には読む価値があると思うが、直接的には浦島伝説には関係していない論述で下巻は魅力的ではない。一般の読者としては上巻だけで十分である。