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『国のために死ねるか』伊藤祐靖(文春新書)

『国のために死ねるか―自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』
伊藤祐靖(いとう・すけやす)(文春新書1069)

2016年7月20日初版発行
255頁




著者は、元海上自衛官。

4章の構成。

第1章は、平成11年(1999)3月23日に発生した「能登半島沖不審船事件」について記す。この事件は、我が国の領海を侵犯し逃走した北朝鮮の不審船を海上自衛隊および海上保安庁が追跡したというものである。著者はこの時、不審船を発見し追跡した船である護衛艦「みょうこう」の航海長であった。現場の当事者である。その当事者がこの事件をルポルタージュのように描いている。

第2章。事件の結末は、不審船をとり逃してしまうというものだった。これが契機となり、海上自衛隊に特殊部隊を創設することとなる。著者はその中心人物で、その創設の過程が描かれる。

第3章。いろいろあり著者は退官して、フィリピンのミンダナオ島で「修行」の日々を送る。そこで現地の若い「女戦士」と出会い、彼女をトレーニングパートナーとするのだが、そこで著者は自分がしてきた訓練の甘さを思い知らされることになる。

第4章は、先述の女戦士や演習で出会った軍人などとのエピソードから「この国のかたち」を考えるというもの。


以上が各章のおもな内容で、そのほかに全体に著者の経歴や著者の父親のエピソードが所々に紹介されている。著者の父親は陸軍中野学校出身の常識外れの人で、そのエピソードもおもしろい。(下記のリンク「島地勝彦との対談」にもエピソードが語られている)

中々の良書である。

特に、第4章の女戦士とのエピソード2つ(詔書の話と掟の話)と黒人の軍人が自らの出自について語った話、それから知り合ったネイティブアメリカンが語った話は、国や民族、誇りや守るべきものは何か等々、さまざまなことを考えさせられる貴重なものである。これらのエピソードだけでも本書を読む価値がある。

本書の書評でリーダー論や組織論やビジネスにひきつけたものがけっこうあるが、理解に苦しむ。著者はそれらにも触れているが、もっと根幹の意識についてを本書で問題にしている。なぜそれがわからないのか。

なお、テレビで「そこの色眼鏡、お前を殺す」と言ったのは小野田寛郎。相手は、野坂昭如である。(本書p.58)

この経緯は、津田信 著『幻想の英雄』にけっこう詳しく書かれている。

また、著者・伊藤祐靖をモデルにした『奪還』という小説がある。

[参考]
『奪還』麻生幾(2013・講談社文庫)
amazon  楽天kobo

伊藤祐靖コラム(予備役ブルーリボンの会)[リンク切れ]

伊勢﨑賢治との対談(現代ビジネス)

島地勝彦との対談(現代ビジネス)

小林よしのりとの対談(ベストタイムズ)[リンク切れ]

麻生幾との対談(iRONNA)(2021年3月末でサービス終了)

成毛眞との対談(日経ビジネスオンライン)
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日本人の掟とは?【CGS 神谷宗幣 伊藤祐靖 第122-2回】[YouTube]

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