『名人に香車を引いた男―升田幸三自伝』升田幸三、構成執筆:田村竜騎兵(朝日文庫)
昭和60年(1985)4月20日初版発行
349頁
初出は、『週刊朝日』。
著者は、将棋の棋士。
型破りな著者のエピソードが大変おもしろい。文章は、聞き書きをしたもので、名調子の升田節で心地よく読める。
将棋指しになるために、13歳のときに物差しの裏に母へのメッセージを残して家出をした逸話。
同門の大山康晴の話。坂田三吉の話。
木村名人との戦い。
GHQに呼び出されておこなった有名な問答。(この問答は日本人ならみな知っておきたいレベルのもの)
将棋界の政治の話などなど。
どれも興味深い。
ただ型破りなだけではなく、エピソードに著者の教養がうかがえる。
棋譜も載っているが、将棋のルールを知らない人でも読んで楽しい本であると思う。
升田幸三という魅力ある人物を知れるし、学ぶところも多い良書である。おすすめ。
本書は、朝日文庫だが、中公文庫でも刊行されている。
朝日新聞社刊のハードカバーの単行本には、巻頭に写真(白黒)が4ページある。
[関連]
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『名人に香車を引いた男』升田幸三(1980・朝日新聞社)単行本
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