『外科医の悲劇 崩れゆく帝王の日々』ユルゲン・トールヴァルド、小川道雄訳(へるす出版)
2013年
327頁
加齢に伴って,脳動脈硬化をもとにした精神障害や,認知症の頻度が増す。外科医も例外ではない。
本書は,20世紀前半にもっとも偉大な外科医として名を馳せたザウエルブルッフが晩年,精神面の崩壊が進んでいたにもかかわらず,それを自覚せず手術を続けたために起こした数々の過ちと,その手術を止めることのできなかった周囲の状況を,事実に基づいてドラマチックに描いたドキュメンタリーである。
外科医が身を引くべきときを考えさせるとともに,一般社会にも通じるいわゆる引き際を問う問題作である。1969年に日本語訳が出版されているが,本書は日本を代表する外科医・小川道雄による完全新訳版である。出典:へるす出版公式サイト