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『現代について』西尾幹二(徳間文庫)

『現代について』西尾幹二(徳間文庫・教養シリーズ)

1997年12月15日初版発行
426頁




著者は、ドイツ文学者、評論家。

さまざまな新聞や雑誌に書かれた1985年~96年の著者の評論がまとめられた評論集。
「「謝罪」の時代は終わった」は、本書書き下ろしで、これだけでも本書をおすすめしたい位のものである。

歴史認識、教科書問題、国際政治、オウム事件、安全保障、外国人労働者、教育問題等々、幅広く質の高い評論が収められている。きれいに分類し、理解しやすいように配列された編集がすばらしい。各セクションの区切りには、「Coffee Break」と題して短いエッセーが配されていて、これもなかなかよかった。

1997年刊で80年代の評論もあり今や全然「現代」ではないが、2019年の今読んでも学ぶところが多い本である。
確かな分析、見識で未来を予見しているような箇所もいくつかあった。

(p.108)初出1996

私は、オウム真理教は小型ファシズムと考えています。ファシズムというと、いままでの観念では、党が支配し、旗が振られ、制服を着た軍隊が闊歩し、独裁者が演壇で拳を振り上げて演説するというイメージがあります。しかし、先進工業国では、こういうファシズムはもう起こらないでしょう。代わりにまったく違ったスタイルのファシズムが登場する可能性があります。まさに宗教が土台になったファシズムが、今後わが国だけではなくて、世界的にも重要な問題になってくるのではないかと思っています。

これを読んで筆者は、すぐにISIL(自称イスラム国)を想起した。

読み応えのあるおすすめの良書。へたな本の4、5冊分以上の内容がつまっている。西尾幹二の評論で一冊すすめるとするなら本書をすすめる。

[筆者注]
(p.34)「中曽根首相の人種差別発言」
1986年(昭和61年)9月22日、中曽根首相は、静岡県函南町で開催された自民党全国研修会の講演のなかで、日本と米国の社会を比較して、次のように述べた。
「日本はこれだけ高学歴社会になって、相当インテリジェントなソサエティーになって来ておる。アメリカなんかより、はるかにそうだ。平均点から見たら、アメリカには黒人とか、プエルトリコ人とか、メキシカンとか、そういうのが相当おって、平均的に見たら知識水準はまだ非常に低い」

「藤尾文相発言」
対談での「戦争で人を殺しても殺人(罪)には当てはまらない」「韓国併合は合意の上に形成されたもので、日本だけでなく韓国側にも責任がある」等の発言。

(p.186)「村松氏」とはフランス文学者の村松剛か。
(p.367)「盟友安倍」というのは、安倍晋太郎。

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