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『リベラル優生主義と正義』桜井徹(ナカニシヤ出版)

『リベラル優生主義と正義』桜井徹(ナカニシヤ出版)

2007年
260頁
定価:3,300円(税込)



遺伝子テクノロジーと人間の福利追求の功罪を歴史・理論・倫理の視点から問う
子孫の遺伝的特徴を選択する可能性を探ることは道徳的に許されるのかを分析・探究した労作。

「はしがき」より
……本書が狙うのは,その両極端の間の中道を探ることである。すなわち,リベラル優生主義に対する従来の反対論のように,遺伝子テクノロジーの将来的発展がもたらしうる不吉な未来を暗示したり,優生主義の「過去」の罪状を呼び起こすことで,リベラル優生主義を片づけるようなことを避ける一方,リベラル優生主義の無制約の暴走に対しては合理的根拠のある倫理的制約を提示する,という道筋を探究したいのである。

出典:勁草書房公式サイト


『リベラル優生主義と正義』桜井徹(ナカニシヤ出版)
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目次(収録作品)

序章 リベラル優生主義の原理
第一節 現象学の捉え難さ
着床前遺伝子診断/生殖的クローン技術/遺伝子工学
第二節 現象学の「主題的概念」
「生殖の自由」のラディカルな拡張/治療と改良との道徳的等価性/遺伝子への介入と環境への介入との道徳的等価性/二つの補助的論点/リベラル優生主義と民主的選択/Eugenics の訳語についての補論

第一章 優生主義の由来
第一節 人類の遺伝的改良の試み
『最後にして最初の人間』/「遺伝学者有志のマニフェスト」
第二節 優生主義の歴史的淵源
フランシス・ベーコンにおける人間本性の科学的改造/トマス・R・マルサスの救貧法制批判/アルフレッド・R・ウォレスによる人間社会への自然選択説の適用/フランシス・ゴールトンの優生学の構想/ウィリアム・R・グレッグの「社会の退化」/グレッグにおける進化/チャールズ・ダーウィンの社会ダーウィニズム

第二章 二〇世紀における改革派優生主義
  ――J・B・S・ホールデーンとハーマン・J・マラー――
第一節 ゴールトンにおける人間の自己進化
優生学の定義/ゴールトンの優生学とナショナリズム/ゴールトンにおける世論と強制/ゴールトンの継承者たち
第二節 体外発生技術による改革派優生主義――J・B・S・ホールデーン――
『ダイダロス』における積極的優生主義/生物学的発明という「倒錯」
第三節 社会改革と精子選択――ハーマン・J・マラー――
『夜から逃れて』における改革派優生主義/「人間の生物学的退化」と社会的優生主義/人類による自己進化/マラーと遺伝子工学
第四節 マラーの優生主義が意味するもの
精子選択の継承者/精子選択の意味と問題点

第三章 リベラル優生主義の倫理的正当化
第一節 現代遺伝学におけるリベラル優生主義
シンポジウム「ヒト生殖細胞系列を設計する」/遺伝子工学による人間の自己進化
第二節 現代正義論におけるリベラル優生主義
ロナルド・ドゥオーキンの倫理的個人主義/ジョン・ロールズの「社会的資産としての遺伝的資質」/ロバート・ノージックの遺伝子スーパーマーケット/リベラルな正義論にとっての人格とゲノム

第四章 リベラル優生主義への反論と応答
第一節 技術的反論
エヴリン・フォックス・ケラーにおける遺伝子の構造と機能/八ッバード、ルウォンティン、ホーによる遺伝子決定論批判/中央集権的遺伝子と分権的遺伝子/遺伝子への介入と環境への介入/遺伝子工学の長期的リスク/ヒト生殖細胞系列への損傷
第二節 政治的反論
社会的格差の拡大/援助減少論/表現主義的反論/社会協力枠組みの改革/「包摂される利益」と「最大化利益」/「障碍者を生む自由」と「障碍者を生まない自由」
第三節 哲学的反論
人権と生物学的人間本性/フランシス・フクヤマにおける道徳的秩序と人間本性/ユルゲン・ハーバーマスと「対称的承認関係の侵食」/ニコラス・エイガーの応答

終章 リベラル優生主義のゆくえ
  ――福音か災厄か――
第一節 遺伝子改良の原動力と自己規制
市場経済と生物学的欲求/「機会の平等」と遺伝子介入/市場原理に基づく遺伝子介入/「開かれた未来への権利」と遺伝子介入/リベラル優生主義とハーバーマス
第二節 リベラル優生主義の限界
肉体的改良/知的改良/道徳的改良
第三節 生殖における国家の役割と限界
国家は「将来世代の遺伝的福利の保護者」か/社会的目的のための道徳的改良
第四節 結び
ヒト生殖細胞系列遺伝子工学への懐疑の源泉/遺伝子改良は人間の「経験」を希薄にするのか/リベラル優生主義の進路をいかにコントロールすべきか

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