オンデマンド版2014年
348頁
定価:5,280円(税込)
目次(収録作品)
序論
I シジウィックの倫理学説
第一章 「倫理学」の射程
1.1 倫理学とは何か
1.2 倫理学が扱う「行為」
1.3 倫理学の「方法」
第二章 『倫理学の諸方法』の概略
2.1 問題設定
2.2 著作の構成
2.3 著作の中での功利主義の位置づけ
第三章 基本的な道具立て
3.1 倫理学の三つの方法
3.2 直観とは何か
3.3 「常識」と「常識的道徳」の意味
第四章 基本概念の分析
4.1 「理性」という語が意味するもの
4.2 「べき」「正しい」
4.3 善の概念
4.4 「正しい」「べき」と「よい」との関係
4.5 善と、人間の意識
第五章 「自明でしかも意義のある命題」の基本条件
5.1 シジウィックが挙げた四条件
5.2 もう一つの条件:単に同語反復的な命題ではないこと
5.3 常識的道徳の限界と、哲学的直観主義の必要
第六章 三つの基本原理
6.1 三原理についての言明
6.2 三原理に共通の要素、そして相違
6.3 同語反復条件および四条件による妥当性テスト
6.4 三原理と、倫理学の三方法との関係
第七章 功利主義の基礎
7.1 帰結主義と最大化原理
7.2 快楽説
7.3 「諸個人の快楽の総和最大化」としての功利主義の成立
7.4 常識による支持
7.5 利己主義との対立可能性
II 現代功利主義の再検討
第八章 道徳的直感に訴えないアプローチ
8.1 ヘアの方針
8.2 ヘアによる功利主義の基礎づけ
8.3 検討:ヘアの議論に潜む、自愛・博愛の原理
第九章 快楽説再考
9.1 ヘアの選好充足説
9.2 選好充足説批判
9.3 ヘジンとヘアの応酬:「快楽説の論証」の再評価
9.4 再々考:快楽説は全面的に正しいか?
第十章 選好強度の個人間比較と、効用の総和最大化
10.1 強度の測定・個人間比較の可能性を否定した場合のパラドックス
10.2 個人間比較に必要な工夫:転換比の設定、選好再現
10.3 総和最大化
第十一章 「実践理性の二元性」の調停
11.1 幾つかの試み
11.2 ブラントの方法
11.3 残る問題
結論章
今日では、人が何かに悩んでいるとして、助けを倫理学に求める人は余りいない。倫理学がそれだけ信用されていないわけである。しかし、個人的な決断で解決のつく問題ならともかく、社会の中で、他人に影響を及ぼしそうな悩みを抱えているなら、整合的で合理的な解決のための手引として、倫理学の努力も役立つはずである。本書で問題にするのは、そうした倫理学の一つ、功利主義である。現代的道徳哲学の先駆者といわれる19世紀のヘンリー・シジウィックの学説を解明し、それによって現代倫理学を再検討する。
出典:勁草書房公式サイト
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『シジウィックと現代功利主義』奥野満里子(1999・勁草書房)定価:6,050円(税込)
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