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『松翁道話』(岩波文庫)

『松翁道話』布施松翁、石川謙校訂(岩波文庫)

1936年1月10日初版発行
235頁

旧字旧かな




江戸時代後期の心学者・布施松翁の道話をまとめた本。
(道話とは、身近な例をあげ道理、道徳を説いた心学の訓話。)

軽妙な調子の語り口が興味深い、なかなかおすすめの本。
江戸時代の孝行息子の話である「西岡孝子儀兵衛行状聞書」も収められている。単なる孝行話ではなく、ユーモアが感じられるよい話。

内容は何ら難しい所はないが、旧漢字旧かなで、また古い言葉や言い回しが多いが注はないので、一般的な教養レベルでは読めないだろう。(旧漢字旧かなが読めれば、ある程度は理解できるので挑戦してみるのもよい)
現代語訳や注を付した手軽に読める版を望む。

新字新かなに改める。[]内は筆者。
(p.45)

その楽しみとする所は、どのような事ぞ。ちょっと寄合うても、世間ばなしか、芝居ばなしか、或は喰飲の噺しか、損得の事か、自慢するか、人をそしる事か、色欲のはなしか、人を恨むか、一段下りては酒呑むか、博奕か、けんかするか、我身勝手ばかりいうて腹立てるか、大体是程の事はかしらぬ。不自由なものじゃ。是等これらは人の恥とする所なれど、仕付けた癖なれば何とも思わず、是が人の道の様に思い詰めている。すっきり此様このような無益な事が来世になり、せんぐり[先繰り]におくれて行くゆえ、手廻しも悪くなり、貧乏もする筈じゃ。

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