『ヴードゥーの神々―ジャマイカ、ハイチ紀行』ゾラ・ニール・ハーストン、常田景子訳(ちくま学芸文庫)
2021年
464頁
目次(収録作品)
第1部 ジャマイカ(雄鶏の巣/カレー・ゴート/猪狩り/通夜の歌/カリブの女たち)
第2部 ハイチの政治と人々(国家の再生/次の百年/黒いジャンヌ・ダルク/ルコントの死)
第3部 ハイチのヴードゥー(ヴードゥーの神々/ゴナーヴ島/アルカーエと、その意味するところ/ゾンビ/セクト・ルージュ/パルレー・シュヴァル・ウ(わが馬よ、語れ)/墓場の土、その他の毒/ドクター・リザー/神とホロホロ鳥)
20世紀前半、黒人女性学者がカリブ海宗教研究の旅に出る。秘儀、愛の女神、ゾンビ――学術調査と口承文学を往還する異色の民族誌。解説 今福龍太
私たちの世界には生者と死者がいる。だが、ハイチには生者と死者がいて、それからゾンビがいるのだ―。20世紀前半の人類学者ハーストンは、米国南部の黒人民話の調査を経て、カリブ海域へフィールドワークの旅に出る。その成果たる本書は、習俗や秘儀等の民族誌的記述のみならず、ハイチの歴史や政治批評、調査体験談が縦横に挿入され、最後は音楽とダンスの始原についての短い神話で締めくくられる。ハーレム・ルネサンスの黒人作家としても知られる彼女の手法は、学術研究と口承文学のあわいを往還し、「遠い異文化の客観的記述」としての文化人類学に異議を投げかけた。“異色の人類学”の著作として名高い書。
出典:筑摩書房公式サイト