2021年
272頁
目次(収録作品)
第1章 純愛とiピル
カウサリヤの恋/「名誉殺人」という名付け/「アイ・アム・カウサリヤ」/親の期待とiピル/「伝統」と家族の呪縛 【解説:カーストとダリト差別】
第2章 水の来ない団地で
極彩色の内装/文字のない世界/洗濯屋カーストのグル/カースト・アソシエーションとインフォーマルな社会保障 【解説:新しいインドを理解する三つのM】
第3章 月曜日のグル法廷
「俺、合法なんだってさ」/権力の結節点としてのグル/舗装道路と使われないトイレ/世捨て人のパラドックス 【解説:インドの「消えた女性たち」】
第4章 誰が水牛を殺すのか?
マーランマの怒り/社会的制裁と新しい抵抗/カラスのフンと呼ばれた少年/アディジャン・パンチャーヤトとダリト解放運動/数千年の傷を癒すこと/無縁者のカリスマ 【解説:インドの地方自治と農村パンチャーヤト】
第5章 ウーバーとOBC
スレーシュが刑務所に行くことになったわけ/コネと機転/「腐敗・汚職行為の必要性」/ウーバーとインドの情報革命/都市労働者とOBC/教育という投資/スレーシュの「チェンジ」 【解説:IT産業とカースト】
世界有数の大国として驀進するインド。
その13億人のなかにひそむ、声なき声。残酷なカースト制度や理不尽な変化にひるまず生きる民の強さに、現地で長年研究を続けた気鋭の社会人類学者が迫る!
日本にとって親しみやすい国になったとはいえ、インドに関する著作物は実はあまり多くない。
また、そのテーマは宗教や食文化、芸術などのエキゾチシズムに偏る傾向にあり、近年ではその経済成長にのみ焦点を当てたものが目立つ。
本書は、カーストがもたらす残酷性から目をそらさず、市井の人々の声をすくいあげ、知られざる営みを綴った貴重な記録である。
徹底したリアリティにこだわりつつ、学術的な解説も付した、インドの真の姿を伝える一冊といえる。
この未曾有のコロナ禍において、過酷な状況におけるレジリエンスの重要性があらためて見直されている。
超格差社会にあるインドの人々の生き様こそが、“新しい強さ”を持って生きぬかなければならない現代への示唆となるはず。出典:集英社新書公式サイト