『部分と全体―私の生涯の偉大な出会いと対話』W.ハイゼンベルク、山崎和夫訳(みすず書房)
新装版1999年
403頁
目次(収録作品)
序文 湯川秀樹
序
1 原子学説との最初の出会い(1919-1920年)
2 物理学研究への決定(1920年)
3 現代物理学における“理解する”という概念(1920-1922年)
4 政治と歴史についての教訓(1922-1924年)
5 量子力学およびアインシュタインとの対話(1925-1926年)
6 新世界への出発(1926-1927年)
7 自然科学と宗教の関係についての最初の対話(1927年)
8 原子物理学と実用主義的な思考方法(1929年)
9 生物学、物理学および化学の間の関係についての対話(1930-1932年)
10 量子力学とカント哲学(1930-1932年)
11 言葉についての討論(1933年)
12 革命と大学生活(1933年)
13 原子技術の可能性と素粒子についての討論(1935-1937年)
14 政治的破局における個人の行動(1937-1941年)
15 新しい門出への道(1941-1945年)
16 研究者の責任について(1945-1950年)
17 実証主義、形而上学、宗教(1952年)
18 政治と科学における論争(1956-1957年)
19 統一場の理論(1957-1958年)
20 素粒子とプラトン哲学(1961-1965年)
本書は量子力学建設期の巨人、W・ハイゼンベルクによる『Der Teil und das Ganze』(1969) の邦訳である。訳はハイゼンベルクのもとで彼と共同研究を行っていた山崎和夫により、序文を湯川秀樹が寄せている。この豪華な顔ぶれが並ぶ本のページをめくってみると、まず内容のおもしろさに引き込まれる。題名からは難解な哲学書を思わせるが、本書はハイゼンベルクの自伝なのである。
圧巻は彼とボーア、アインシュタイン、ゾンマーフェルト、パウリ、ディラック、プランク等巨人たちとの対話である。そこではアインシュタインが「サイコロを振る神」の考え方を受け入れられず執拗に食い下がり同僚にいさめられたり、温厚な人柄で知られるボーアがシュレーディンガーと対決しついにシュレーディンガーが熱で倒れるも、ボーアはベッドの横にイスを持ち込んで議論を続けようとしたりと、そこからは巨人たちの姿を生身の人間として感じることができる。キリスト教の聖書は物語と対話によって神の教えがあらわされているが、本書では物語と対話によって物理学の巨人たちの教えがあらわされている。その言葉には重みがあり本書を開くたびに新たな発見がある。(別役 匝)
アマゾン商品説明より