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『日本語をみがく小辞典〈形容詞・副詞篇〉』森田良行(講談社現代新書)

『日本語をみがく小辞典〈形容詞・副詞篇〉』森田良行(講談社現代新書969)

1989年10月20日初版発行
228頁




著者は国語学者。

本書は、『日本語をみがく小辞典』の〈名詞篇〉、〈動詞篇〉に次ぐシリーズ3冊目の最終巻。

日本語の形容詞・副詞をさまざま取り上げ、それについてエッセー風に論ずるという構成。
書名に「辞典」とあるが索引もついていなく全く辞典ではない。

形容詞・副詞は抽象的なので、とらえどころがなく難しいと著者が断っている(p.226)が、冴えない。

ところで、前2作にも「おかしな見識」を指摘したが、本書がいちばん酷い。

(p.50)

日本人は欧米人と違って、生活の中に休養やレジャーを取り込むことが下手だった。

いつの時代のどの階級(階層)と較べて言っているのか。世界中どこでも、現在の先進国でも「貧乏人は暇なし」だし、たとえば江戸時代の庶民でも風流に暮らしていましたよ。

(p.78)

弱い立場の者専用の形容詞が多いのも日本語の一つの特徴だろう。女性や子供が精一杯がんばっているさまを見て「いじらしい」と言い、心が痛むほど痛々しい幼児おさなごの可憐さを「いたいけな」と形容する。何か壊れ物でも扱うように大事にするといえば聞こえがよいが、実はそうした心理の背景には、婦女子を弱者として特別視する男の傲慢さがあるのではないだろうか。

なぜ「男の傲慢さ」に、ことさら繋げようとするのか。

(p.93)

人を無視したり極端な場合は異端視して村八分に追い込む、いかにも島国根性そのままだが(略)

外国の「異端視」は、ふつう我が国のものよりずっと苛烈なものですよ。それから見れば「村八分」はとても穏当なものでしょう。

(p.106)

[「わざと」は]「わざとらしい」などと同じく”こしらえごと”を意味する言葉だ。人を欺く点では確かに反道徳的だが、そうせざるを得ない世渡り上の技法だろう。この手の言葉が日本語にひしめき合っているというのは、いかに過去の日本社会が弱者にとって住みにくく、仮面を着けねば生きていかれぬ人間関係であったかを物語る。

江戸時代でも鎌倉時代でも平安時代でもよいが、その同時代の外国では、我が国より弱者が住みやすかったのでしょうかね。私はそんなことはないと思います。

(p.112)

日本語は、下位者の側から上を望む発想が基本にあって、(略)人間関係を表す語群にも、この色合いが濃い。その代表が「羨ましい」と「ねたましい」だが、どちらも他人の恵まれた状態を共に喜ぶどころか、逆に悔しがってそれを憎むマイナスの状態の感情だ。

こう言うなら「他人の恵まれた状態を共に喜ぶ」外国語の用例をあげるべし。

(p.112)

「めめしい」は「女々しい」で女性のような性格だと断ずる形容詞だから、男に対してだけ使える。女性蔑視もいいとこだ。反対は「雄々しい」だろう。「めめしい」はマイナス評価、「雄々しい」はプラス評価というわけで、男性中心の発想も日本語的だ。

こんな例だけで、日本語が特に男中心の言葉であるといえるのだろうか。英語の「man」は、「男、人」という意味があるし、ほかにもそのような例は外国語でも五万とあるのでは。

(p.124)

いずれにしても物事をうるさく感じるというのは、それだけ当人の気持ちが閉鎖的だからで、自分の殻に閉じこもって外界と自己とを遮断していることの証でもある。外界の出来事や外界音を拒絶敬遠する語彙が豊富だということは、どうも日本人の閉鎖性と関連があるらしい。いかにも島国根性の現れだ。
その昔、黒船の来訪を再三受け、「うるさい」と感じ、国内がさわがしく騒然となったのも、まさに鎖国という自己の殻に閉じこもっていたことからの必然の帰結だった。外の音や他人の声が気にさわってうるさいと感じる自己本位の体質は、そう簡単には治まりそうもない。

メチャクチャである。音に関する形容詞が多いことが、なんで閉鎖性につながるのか意味不明。また、鎖国=悪と捉えているようだが、よい面もあったでしょう。それから、「黒船の来訪」は、あれは遊びに来たのではなく「侵略」に来たのですよ。それでいろいろ交渉して、最終的には不平等条約を結ばされたのでしょう。「黒船」の行為の方がずっと「自己本位」ではないのか。(まさか「黒船」は、好意で日本のために国を開いてくれたと思っているのではなかろうな。まさか)

(p.156)

生活の仕方や、生活の中での種々の動作(人事現象)の様子を、大小のサイズを物差しにして表現する(特に小さいほうに多い)とは何と偏狭な島国根性的発想であろう。しかも、多くはマイナスの評価が語感としてつきまとう。言葉として大小を区別して取りたてる意識は差別語と根は共通と見てよいだろう。(略)日本人の意識の底にこうした差別意識があるとしたら大変だ。

日本・日本人を悪くとらえないと気が済まないらしい。学者なんだからまともな分析や考察をせよ。

(p.210)

多くの中から優れたものを取り分け区別する、こうした副詞が多いというのは、それだけ並み一般とエリート(選ばれた者)とを異なる目で見る差別意識の強さにつながる。決して誉められたものではない。

日本人はとりわけ差別意識が強いと思い込んでるようだが、はたしてそうだろうか。どこと比較して言っているのか。私は、日本人が他民族に比べ差別意識が強いとは思わない。

※シリーズ3冊をまとめた角川ソフィア文庫版が刊行された。(こちらには索引があるようだ(「目次」での確認のみ)

[関連]
『日本語をみがく小辞典〈動詞篇〉』森田良行(講談社現代新書)

『日本語をみがく小辞典〈名詞篇〉』森田良行(講談社現代新書)

『日本語をみがく小辞典』森田良行(2019・角川ソフィア文庫)

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