2003年3月10日初版発行
349頁
目次(収録作品)
第1章 武家の次男として生まれて
第2章 伊藤信雄先生
第3章 子供の風物詩
第4章 卒業式の朝
第5章 東京大空襲
第6章 悲報
第7章 約束の日
終章 五十年目の涙
著者は、防衛施設庁長官などを務めた警察・防衛官僚で評論家。(1930‐2018)
本書は、著者の子供の頃を回想したもので、著者の父や母、家庭でのエピソードと小学校時代の生活、恩師の伊藤先生の思い出、それから戦時下の暮らしを綴っている。
近衛文麿からの慰労金、現在の価値で数千万円の大金を父親の命で政治運動の仲間に、子供の時に届けた話(p.42~)。食糧難の戦時下、家族のために空気銃で鳩を狩っていた話(p.203-p.213)などびっくりするようなエピソードが、ちらほらある。全体的には、著者の生きた当時の普通の暮らしが語られているのだが、それもよい。
それから、幼くして亡くなった妹を追悼して著者が小学生の時に書いた作文が収められている(p.63~)が、小学生が書いたとは思えない哀切な名文である。
なかなかおすすめの本。
[筆者注]
「四元義隆氏といえば、五・一五事件で犬養毅総理を暗殺した元海軍中尉だ。」(p.42)
調べたかぎり四元義隆は、犬養毅を暗殺してはいなく、海軍中尉でもないようだ。これは誰かほかの人物や事件と混同したものか。