『「日本文化論」の変容―戦後日本の文化とアイデンティティー』青木保(中公文庫)
1999年4月18日初版発行
212頁
目次(収録作品)
1 戦後日本と「日本文化論」の変容
2 『菊と刀』の性格
3 「否定的特殊性の認識」(1945~54)
4 「歴史的相対性の認識」(1955~63)
5 「肯定的特殊性の認識」前期(1964~76)、後期(1977~83)
6 「特殊から普遍へ」(1984~)
7 「国際化」の中の「日本文化論」
著者は、文化人類学者。
本書は、ひと言でいうと「日本文化論概論」。戦後から1980年代までの日本文化論の流れをそれぞれの時代の重要な文献を解説しながら、編年的に論じている。
文章は平明で、分析は穏当かつ全体的には偏りなく要を得ていて、手際よくまとめられている。(偏見や間違いの多い『菊と刀』を高く評価し過ぎの感はあるが。)ただ、文化論の歩みを概説した書なので、日本文化論自体に興味がある人には、本書は物足りないかもしれない。そういう人は、本書ではなく日本文化論を論じた本を読むのがよい。
「日本文化論史」を研究する大学生などは、必読だろう。
[筆者注]
こまかいが、正確でないとネットで検索する際にヒットしないことがあるので指摘しておく。
「ウォルフレン『日本権力の謎』」(p.166)
邦訳の書名としては『日本 権力構造の謎』。
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「石川好『鎖国の感性を排す』」(註66、p.201)
『鎖国の感情を排す』が正しい。
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「E・T・ホール『文化をこえて』」(註69、p.201)
『文化を超えて』が正しい。
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「『現代アジア論(仮題)』(中央公論新社、近刊)」(「解説」p.211)
これは、『アジア・ジレンマ』として刊行されたようだ。
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[関連]
『「日本文化論」の変容―戦後日本の文化とアイデンティティー』青木保(1990・ 中央公論社)単行本
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