『人種と歴史/人種と文化』クロード・レヴィ=ストロース、渡辺公三・三保元・福田素子訳(みすず書房)
2019年
152頁
目次(収録作品)
序文 ミシェル・イザール
人種と歴史
I 人種と文化
II 文化の多様性
III 自民族中心主義
IV 古代文化と未開文化
V 進歩の理念
VI 停滞的歴史と累積的歴史
VII 西欧文明の位置
VIII 偶然と文明
IX 文化間の協働
X 進歩の二つの意味
人種と文化
世界で読まれるコンパクトな名著「人種と歴史」を、第一人者・渡辺公三の新訳で。文化の多様性をふたたび断固擁護した「人種と文化」併収。新序文。
『人種と歴史』は1952年、ユネスコの依頼で書かれた。人種差別の偏見と闘う小冊子シリーズの一冊であり、キャンペーンの背景にはナチス・ドイツの人種理論の根絶という戦後の切迫した問題意識があった。
レヴィ=ストロースは、あらゆる社会に存在する〈自民族(自文化・自社会)中心主義〉の幻想性を突き、徹底した文化相対主義を提示し、鋭利な論理で人種主義の思想的根拠を解体する。著者が論じた核心と、込めた熱意を、レヴィ=ストロース研究の第一人者・渡辺公三の訳はまっすぐに伝える。『人種と歴史』は、フランスでは人種差別反対の基本図書として高校の教材になっているという。レヴィ=ストロース思想全体の理解にも肝要の書であり、『野生の思考』『神話論理』に結実してゆく基本的主題と一貫した倫理的態度のエッセンスが凝縮されている。そして、ここに示された他者の寛容、人類史スケールの歴史観は、時を越え、根源的問いを投げかけてやまない。
1973年ふたたび文化の多様性を断固擁護した「人種と文化」(三保元訳)を併収。長くレヴィ=ストロースと研究をともにした人類学者・民族学者イザールが、両著の書かれた経緯、呼び起こした反響から今日の評価までを解説した序文(2001年)をよせる。出典:みすず書房公式サイト