スポンサーリンク

『マンガの描き方―似顔絵から長編まで』手塚治虫(知恵の森文庫)

『マンガの描き方―似顔絵から長編まで』手塚治虫(光文社・知恵の森文庫)

1996年
349頁




目次(収録作品)

第1章 絵をつくる
(漫画は落書きから始まる/漫画の道具、選び方と使い方/顔の描き方から構図まで)

第2章 案(アイデア)をつくる
(「案」を考えるためのふたつの方法/「おかしさ」をつくる六つの要素/漫画アイデア問題集)

第3章 漫画をつくる
(物語の考え方/主役を決め、台本を書く/人物の表情や動作から風景まで)

手塚治虫による、タイトルどおりの「マンガの描き方」の本。1977年初出のものを、文庫化。
著者が想定している主な読者は「今まで描いたこともなかった人」。落書きから始めればいい。紙と鉛筆さえあればいい。手塚は、繰り返しそう言う。そして、「省略、誇張、変形」という基本的な考え方やそれに基づく絵の描き方、実際にアイデアを「ひねり出す」ための「問題集」、など具体的なテクニックを惜しげもなく披露し、漫画の世界への扉をいっぱいに開いてみせる。例えば、「いろいろな顔をつくろう」と題した見開きページ。まゆげ、目、鼻、口の4つのパーツがそれぞれ8つのバリエーションで右ページに描かれ、左ページにはそれぞれを組み合わせて32パターンの顔の例を並べていく。これなら描けるかも…と著者の思惑通りについ手近な紙に落書きしたくなってくるような楽しさ、わかりやすさである。

一方で、読み飛ばしてもかまわない、と前置きしつつ本格的な技法や印刷などの専門的な知識、そしてプロを目指す人や新人漫画家への厳しいメッセージも幾度も顔を出している。後半になるにつれその傾向は強くなり、手塚ファン、漫画ファンには読み応えのある記述が並ぶ。「(アイデアを生む苦しさについて)ぼくだってこうなのだから、みなさんだって労力や努力を惜しんではいけない」。「ぼくの漫画から、戦後の長編漫画が確立されたと、気の弱いぼくだけど、これだけはそう信じている」。漫画の「神様」であった手塚の、漫画界を引っ張る者としての自信と責任感、後輩たちを育てることへの熱い思いに溢れている本。巻末に収録されたQ&A形式のあとがき、夏目房之介の解説も興味深い。(門倉紫麻)

アマゾン商品説明より

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

Secured By miniOrange