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『日本人の自伝 別巻1 山鹿素行・新井白石・松平定信・勝小吉・初世中村仲蔵』(平凡社)

『日本人の自伝 別巻1 山鹿素行・新井白石・松平定信・勝小吉・初世中村仲蔵』(平凡社)(全23巻・別巻2巻)

1982年
494頁




目次(収録作品)

『配所残筆』山鹿素行
『折たく柴の記』新井白石
『宇下人言』松平定信
『夢酔独言』勝小吉
『月雪花寝物語』初世中村仲蔵

山鹿素行は、江戸時代の儒者、兵学者。林羅山に朱子学を学び、甲州流兵学や神道も修めた。仕えていた赤穂の浅野家を辞した後に刊行した『聖教要録』が、当時の官学朱子学を批判しているのを咎められ、再び赤穂に配流された。《配所残筆》は、赤穂に配流されて10年目の1675年に、幼少時から配流仰せ付けの経緯、著者が到達した学問思想の体系などを要約して、弟と娘婿に宛てた遺書としてまとめたものである。

新井白石は、江戸中期の学者、政治家。推挙されて甲府藩主徳川綱豊(のちの家宣)に学を講じ、綱豊が将軍職を継ぐと幕政に参加し、数々の改革を断行した。《折たく柴の記》は全三巻にまとめられた自伝で、八代将軍吉宗に罷免されるまでが描かれている。特に著者の父の姿を伝える部分の描写は出色である。明確な理念を持ち、内的な世界を確立した自らの人間像とその軌跡を描き出した、優れた自伝といえる。

松平定信は、八代将軍徳川吉宗の孫で、奥州白河藩主として天明の大飢饉を乗り切って藩政を立て直した。のちに、田沼意次の後を受けて江戸幕府の老中首座となり、寛政の改革を行った。《宇下人言》は、明治時代に入り、松平家に秘蔵されていたのを発見され、定信の没後100年を機に刊行された。将軍の一族で、幕府の要職にあった人物が、その治績を記録した自伝という点で、大変貴重な資料である。

勝小吉は、のちに江戸城無血開城を実現した勝海舟の父。旗本の妾腹の子として生まれ、生涯に二度の出奔をし、喧嘩や道場破りを繰り返す不良旗本であった。結局無役のまま、37歳で息子の麟太郎(海舟)に家督を譲って隠居した。《夢酔独言》には、42歳にして人倫の道を少し知った本人が、「これまでの所行がおそろしくなった」と末尾に記しているが、そんな八方破れな著者の人生が、何のてらいもなく生き生きと描かれた傑作である。

初世中村仲蔵は、近世の歌舞伎役者。『忠臣蔵』の定九郎などを当たり役とし、演出面でも大きな業績を残した。現在口演されている落語の人情噺『中村仲蔵』の主人公である。《月雪花寝物語》は、著者の幼少期以来の出来事が思い出すままに記されている。下回り役者から出発し、給金千両といわれるまでに出世した著者の半生が赤裸々に語られ、近代以降数多く現れる役者の自伝の嚆矢として高い価値を持った書である。

eBookJapan 商品説明より


[関連]
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