『サンパウロへのサウダージ』クロード・レヴィ=ストロース著、今福龍太著・訳(みすず書房)
2008年
216頁
定価:4,400円(税込)
目次(収録作品)
〈C・レヴィ=ストロース〉
サンパウロへのサウダージ
写真解説(リカルド・メンデス)
ブラジルから遠く離れて(ヴェロニク・モルテーニュとの対話)
〈今福龍太〉
時の地峡をわたって
あとがき
1935年、27歳のC・レヴィ=ストロースは新設のサンパウロ大学に招かれて、ブラジルの地に降り立った。レヴィ=ストロースのブラジルでの軌跡は、当時急速に勃興していた都市サンパウロと、消滅の危機に瀕する奥地の先住民社会とのあいだを往復するものだった。この往還の日々、彼はライカを手にサンパウロの街区を遊歩し、都市の日常をスナップ写真に収めた。新興の熱気に溢れていたはずの都市は、どこか寂しげな気配を纏っている。それらの映像が写真集『サンパウロへのサウダージ』としてブラジルで刊行されたのは1996年。撮影からじつに半世紀以上の時を経ていた。
2000年、ひとりの人類学者がサンパウロに降り立ち、レヴィ=ストロースの足跡を辿りはじめた。『サンパウロへのサウダージ』に導かれ、今福龍太はカメラを手に時の微細な痕跡に眼を凝らした。街路から立ち現れたのは、喪失と憧憬の感情「サウダージ」だった。このサウダージの感触を手がかりに、今福はレヴィ=ストロースの写真の謎へと分け入っていく。
写真を媒介に時の地峡をわたり、人間の悲嘆と輝きとを幾重にも露光する、ふたりの人類学者の深い共鳴の書物。出典:みすず書房公式サイト