『人間 この未知なるもの』アレクシス・カレル、桜沢如一訳(角川文庫)
1952年9月30日初版発行
328頁
目次(収録作品)
第1章 人間とは何か、それを知らなければならないわけ
第2章 人間の科学
第3章 肉体と生理的活動
第4章 精神的活動
第5章 内なる時間
第6章 適応の機能
第7章 個人
第8章 人間の再建
著者は、フランスの外科医、解剖学者ほか。ノーベル生理学・医学賞受賞者(1912年)。(1873-1944)
本書は、人間というものを生理学的、医学的見地で論じるのが主な内容。幅広い事柄を論じているが、一言でまとめると優秀な人々をつくりだして人類を発展させる必要がある、と説いている。
キリスト教の優越性、白人の優越性、および優生思想がそこここに述べられている。いくつか引用しておく(下記)。
いくつか為になるところがあったので読んでよかったが、退屈で現今では読む価値のない部分も多い書。
(p.180)
「我々は已に、人間が玉石混淆で数ばかりが増えた場合、どんな社会的困難が起ってくるかを知っている。不幸であったり、我慾一点張りであったり、馬鹿阿呆であったり、何の役にも立たぬような人間共を長生きさせて何の役があろう? 大切なのは人間の質であり数ではない。」
(p.267)
「低能者と天才とが法律の前で平等な者として立つべき謂れはない。愚鈍で物分りの悪い、注意力を働かすことのできない、気の散り易い者は高等の教育にあずかる権利がない。かような者に、完全な発達をとげた者と同一の投票権を与えるのは不合理である。」
(p.314)
「精神的不具者や非常な数の犯罪者に関する問題が未解決のままになっている。彼らのために、健全な国民は大した負担をもたされている。刑務所や癲狂院の経費、民衆を強盗と狂人とから守護するための費用は莫大なものになっている。実際、文明諸国では、これらの無益有害な者どもを生かしておくために頗る幼稚な方法が執られている。こんな不正常の人間共は正常の者の発達を阻害する。それ故、この問題はもっとよくその正体を直視すべきである。社会はもっと経済的な方法で犯罪人と狂者とを処分すべきでなかろうか?」
(p.315)
「殺人犯とか武装強盗とか、子供を誘拐したとか、貧乏人の物をしぼりとったとか、重大な背任罪を犯した者どもに対しては、適当なガスを用いてらくに死なせるような死刑執行所を設くべきで、そうすれば人道的・経済的に彼らを処分してしまうことができよう。狂人で犯罪人になった者などに対しても、やはりこの処分方法を適用すべきであると思われる。」