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『高村光太郎全集 第3巻』(筑摩書房)

『高村光太郎全集 第3巻』高村光太郎(筑摩書房)

1958年2月10日初版第1刷発行
1994年12月20日増補版第1刷発行
472頁
旧字旧かな

目次(収録作品)

昭和16年(1941)
大詔渙発
十二月八日
鮮明な冬
彼等を撃つ
新しき日に
神の如く行へ

昭和17年(1942)
沈思せよ蒋先生
ことほぎの詞
変貌する女性
シンガポール陥落
夜を寝ねざりし暁に書く
昭南島に題す
特別攻撃隊の方々に
或る講演会で読んだ言葉
独居自炊
帝都初空襲
戦歿報道戦士にささぐ
与謝野夫人晶子先生を弔う
仕事場にて
民国の民と兵とに与ふ
真珠港特別攻撃隊
鬱勃たる健康
われら文化を
山道のをばさん
女性はみんな母である
感激をかくさず
三十年
神とともにあり
新天地
みなもとに帰るもの
少女よ
神これを欲したまふ
逞しき一念
覆滅彼にあり
寒夜読書
戦にきよめらる
われらの道
決戦の年に志を述ぶ

昭和18年(1943)
少女の思へる
殄滅せんのみ
紀元節を迎ふ
さかんなるかな造船
「撃ちてし止まむ」
供木のことば
監視哨
あそこで斃れた友に
艦隊を見る
海軍魂を詠ず
軍人精神
突端に立つ
提督戦死
厳然たる海軍記念日
山本元帥国葬
五月二十九日の事
報道の戦士をたたふ
われらの死生
「まつた」を知らず
「江田島」を読んで
ビルマ独立
友来る
ぼくも飛ぶ
おん魂来りうけよ
勤労報国
粛然たる天兵
救世観音を刻む人
フイリツピン共和国独立
四人の学生
全学徒起つ
戦に徹す
断じてかへさず
激戦未だ終らず
大決戦の日に入る
第五次ブーゲンビル島沖航空戦
十二月八日三たび来る
貴さ限りなし
少年飛行兵
少年飛行兵の夢
少女戦ふ
海上日出
熱鉄烈火の年
マキン、タラワの武人達
新年よ、熟視せよ
新年は見る

昭和19年(1944)
昭南島生誕二周年
臣ら一億楠氏とならん
南洋眼前にあり
品性の美
少年兵
陽春の賦
敵ゆるすべからず
必勝の品性
春暁におもふ
山林頌
美をすてず
保育
写真を見て
米英自ら知らず
合せ祀らるる靖国の神に
われらの祈
戦意愈々昂し
古代の如く
たのしい少女
弾薬手
根元の道
ほんとの力
婦女子凛烈たり
黒潮は何が好き
南瓜賦
米英来る
美しき落葉
最大の誇に起つ
神州護持
十二月八日四たび来る
われらの雄たけび
わたつみのうた
大東亜の子ども達よ
満三年
新春に面す
二千六百五年のむかし
皇太子さま御乗馬

昭和20年(1945)
皇国骨髄の臣
梅花かをる
青春のうた
力を知る
無想の剣
おほぞらのうた
栗林大将に献ず
神潮特別攻撃隊
戦火
琉球決戦
海軍記念日に
薫風の如く
勝このうちにあり
一億の号泣
犯すべからず
小曲二篇
石くれの歌
非常の時
松庵寺
武装せざる平和
永遠の大道
雪白く積めり

昭和21年(1946)
和について
皇太子さま
国民まさに餓ゑんとす

絶壁のもと
(観自在こそ)

昭和22年(1947)
山菜ミヅ
田植急調子
(リンゴばたけに)
暗愚小伝
 家
  土下座
  ちよんまげ
  郡司大尉
  日清戦争
  御前彫刻
  建艦費
  楠公銅像
 転調
  彫刻一途
  パリ
 反逆
  親不孝
  デカダン
 蟄居
  美に生きる
  おそろしい空虚
 二律背反
  協力会議
  真珠湾の日
  ロマン ロラン
  暗愚
  終戦
 炉辺
  報告(智恵子に)
  山林
暗愚小伝断片
 (死はいつでも)
 わが詩をよみて人死に就けり
山のひろば
蒋先生に慙謝す
脱却の歌
「ブランデンブルグ」
試金石
岩手山の肩

昭和23年(1948)

人体飢餓
東洋的新次元
山口より
 山口部落
 かくしねんぶつ
 クロツグミ
 ヨタカ
 別天地
噴霧的な夢
おれの詩
お祝のことば
新年
岩手の人

昭和24年(1949)
もしも智恵子が
女医になつた少女
悪婦
山の少女
山からの贈物
月にぬれた手
滑稽詩二篇
 Rilke Japonica etc.
 赤トンボ
智恵子抄その後
 元素智恵子
 メトロポオル
 裸形
 案内
 あの頃
 吹雪の夜の独白
鈍牛の言葉
山荒れる
建てましよ吾等の児童会館
この年
あいさつ
一九五〇年

昭和25年(1950)
偶作
典型
クチバミ
金田一国士頌
東北の秋
開拓に寄す
大地うるはし
人間拒否の上に立つ
明瞭に見よ
船沈まず
遠い地平
初夢まりつきうた

昭和26年(1951)
岩盤に深く立て
智恵子と遊ぶ

昭和27年(1952)
山のともだち
ばた屋
餓鬼
報告
お正月に

昭和28年(1953)
東京悲歌
十和田湖畔の裸像に与ふ
かんかんたる君子

昭和29年(1954)
記者図
弦楽四重奏
新しい天の火

昭和30年(1955)
開拓十周年
追悼
開びやく以来の新年
お正月の不思議
生命の大河

解題

(p.429)
第三巻には、小曲を含む詩二百四十三篇を収めた。昭和十六年(一九四一)十二月八日の太平洋戦争開戦から昭和三十年(一九五五)十二月十九日の最後の作品までである。


先の大戦の日本の戦果を称えた詩、戦後、そのことを悔悟したした詩等を収める。
重要かつ興味深い書。おすすめ。

(p.77)

さかんなる造船

鉄は生きてゐる。
鉄は生きて人間に答へる。
鉄は人間の気魄をよろこぶ。
鉄を御し得るものは鉄の如き心である。
鉄を左右し得るものは鉄の如き腕である。
鉄を切り焼き鍛ち削りわがねて
たちまち幾千トンの船を建造するもの、
かかる鉄の如き意志の人々昼夜を分たず、
力をつくして君国のため
炎と轟音と油と精密機械とに挑む。
人は鋼板にケガキする。
人は厖大な機械場きかいばに部署を守つて
押切る、打ち抜く、孔を穿つ、へつる。
十五キロのハムマアを揮つて曲げる。
ガス切断の青い危険な火花、
千幾百度のホドの白熱、
巨人のやうなだんまりの水圧機、
鋳物、製缶、鍛冶かぢ、研磨、
さうしてここには無数のベルト。
旋盤、ミイリング、歯切り、タアレツト、
人はコムパスでミリの又ミリを争う。
一切のかくれた労務に合力がふりきせられて
見よ、大空のもとあま鳥船とりふねは形づくらる。
生きた鉄の伸縮を制して船の中心は測られ、
幾十万のリベツトはカシメられ、
あらゆる人智と人工との有機体、
鉄の一大交響楽篇は成る。
さかんなるかな、造船。
力あるかな、船を生む人々。
鉄の如き意志もて鉄をして答へしむる
かの人々はかがやかしいかな。

(昭和十八年二月十一日作。)

※新漢字に改める。
※高村光太郎の著作権は消滅している。

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