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『トキワ荘の時代』梶井純(ちくまライブラリー)

『トキワ荘の時代―寺田ヒロオのまんが道』梶井純(かじい・じゅん)(ちくまライブラリー)

1993年7月30日初版発行
202頁

定価:1,165円(税別)



著者は、出版社勤務、編集プロダクション代表を経てフリーの評論家。本名は長津忠。(1941-2019)

トキワ荘の中心的な存在であった寺田ヒロオの漫画家人生を軸に、それに伴う漫画史をまとめている。

所々に出てくる小説風の描写やあまり論には関係ない著者の思い出の箇所が気になった。
寺田ヒロオの評伝に徹した方がよい本になったと思う。
また、本書のために寺田ほかにインタビューしているが、いつどのように行ったのかを(ほぼ)書いていないのは、よくない。
それから、寺田の最期を著者は知っているはずなのに、書いていないのはいけない。

漫画は健全なものでなくてはならないという潔癖なまでの信条を持っていた寺田は、当時大人気だった劇画などの「不健全」な描写を批判していた。しかし、読者はそのような漫画を求めていて、寺田はこの点で編集者と意見が対立し、当時人気があったのに、結局三十半ばで週刊誌に書くのをやめる。学習雑誌などに細々と書いていたが、それも数年でやめ絶筆。

その後は、漫画雑誌『漫画少年』の作品目録等をまとめた仕事(『漫画少年』史 [amazon](湘南出版社))をしたほかは、漫画界とは接点を持たず、引きこもり酒を飲み、健康を害するも医者にもいかず、61歳で没する。

寺田が信頼していた漫画家の棚下照生(たなか・あきお)は、彼が混乱して電話をかけてきたことを振り返りながら「寺田は、死にたかったんじゃないのかな。ゆっくりゆっくり死んでいったんじゃないかな」と語っている。

また、安孫子素雄(藤子不二雄A)は、寺田の死を「一種の緩慢なる自殺」と表現している。

おそらく著者は、寺田に思い入れがありすぎて、寺田の最期をしっかり書けなかったのだと推測する。

トキワ荘、寺田ヒロオに興味のある人は、読んでも悪くない。
それらを研究する人は必読。

なおトキワ荘について知るのに最良なのは、藤子不二雄A『まんが道』である。
また、絶版だが、藤子不二雄A『トキワ荘青春日記』(1981・光文社)もよい。この本は、1996年と2016年に復刊されているが、それらは元本にある対談等が省略されているらしいので、出来れば元本を読むのがよい。
(筆者はもちろん『まんが道』全巻、『トキワ荘青春日記』すべて読んでおすすめしてます)

[追記]
2020年2月に文庫版刊行。
267頁
定価:880円(税別)

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