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『〈新編〉ぼくは12歳』岡真史(ちくま文庫)

『〈新編〉ぼくは12歳』岡真史(おか・まさふみ)(ちくま文庫)

1985年12月4日初版発行
285頁




目次(収録作品)

ぼくは12歳
  小学六年の晩秋より(一九七四~七五年)
  中学生になる前、春の休みに(一九七五年)
  中学一年の春より(一九七五年)

作文・読書感想文 小学二年より中学一年まで(一九七〇~七五年)

悲しみの中から
  同行三人(岡百合子)
  あとがきとして(高史明)
未知の若い人々と


著者の岡真史は、中学一年(12歳)で近所の団地から飛び降り自殺した少年。(1962年9月30日-1975年7月17日)
彼の書いた詩が死後発見され書籍化された。本書はその文庫版。
詩のほかに、作文、それから両親の文章と読者からの手紙とその返事を収録する。

(p.24)

おこられました

おこられました
なぐられました
でもぼくはまだ一度も
おこられてうらみはもちません
それは反せいしているのでしょう
そんけいしているのでしょう
今もぼくはすがすがしい

(p.25)

バイオリン

バイオリンの音色が
なりひびいています
世界一きれいな音です
それに合わせて
花がおどります
風がうたいます
本当にいい音色です
でもぼくは
バイオリンはひけません
でも心でひいてるんです

(p.42)

ワイングラス

わすれかけていたワイングラスに
ワインを入れる
わすれかけていたワイングラスに
くちびるをよせれば
すぎさった日々を思いだす
そうあのころは19さい……
やっと大学に入れたといって
おいわいのかんぱいをした
ワイングラス……
けっこんしたばん
ワインとともに
このワイングラスもりょこうした
ぼくのあわいせい春を
ずっとみてきたワイングラス

すばらしい才能。12歳でこのようなすぐれた作品をつくれる者はめったにいない。引用した「おこられました」「バイオリン」は、内容について特に鋭い感性を感じられはしない。「バイオリン」なんかバイオリンがよい音色だというただそれだけのことである。誰でも感じることである。しかし、多くの人は彼のように表現できない。仮に全く同じことを感じていてもである。そこが才能である。
「ワイングラス」は、大人の設定で詩作している。年齢はどのようにイメージしていたのだろうか。50歳くらい?80歳くらい?。ともかく、このように想像をめぐらせて詩を作れるのは、すぐれた資質である。この詩のほかにもいろいろな年齢の設定で作った詩がある。

作者が若くして亡くなったりしていると、そのことに感情移入して過大に評価したりしがちだが、そのような情報をまったく知らなくとも筆者は彼の詩を高く評価しただろう。
おすすめの良書。。

[関連]
『ぼくは12歳―岡真史詩集』岡真史、高史明・岡百合子編(1976・筑摩書房)
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『ぼくは12歳』岡真史、高史明・岡百合子編(1982・角川文庫)
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