1988年
265頁
目次(収録作品)
1 その中の人、現し心あらむや
2 世の乱るゝ瑞相とか
3 羽なければ、空をも飛ぶべからず
4 古京はすでに荒れて、新都はいまだ成らず
5 風のけしきにつひにまけぬる
6 あはれ無益の事かな
7 世にしたがへば、身くるし
8 世中にある人と栖と
9 夫、三界は只心ひとつなり
10 阿弥陀仏、両三遍申してやみぬ
1945年3月、東京大空襲のただなかにあって、著者は「方丈記」を痛切に再発見した。無常感という舌に甘い言葉とともに想起されがちな鴨長明像はくずれ去り、言語に絶する大乱世を、酷薄なまでにリアリスティックに見すえて生きぬいた一人の男が見えてくる。著者自身の戦中体験を長明のそれに重ね、「方丈記」の世界をあざやかに浮彫りにするとともに、今日なお私たちをその深部で把えて放さぬ伝統主義的日本文化を鋭く批判する名著。
毎日出版文化賞受賞。出典:筑摩書房公式サイト