改版1955年
224頁
このスケッチは、いろいろの意味で思い出の多い小諸生活の形見である。――藤村
28歳の藤村の口語文への最初の試みは、大自然に囲まれた信州での生活において行われた。明治三十二年四月、詩集「若菜集」などにより、すでに新体詩人として名声を得ていた藤村は、教師として単身、信州小諸へ赴いた――。
陽春の四月から一年の歳月、千曲川にのぞむ小諸一帯の自然のたたずまい、季節の微妙な移り変わり、人々の生活の断面を、画家がスケッチをするように精緻に綴った「写生文」。「詩から散文へ」と自らの文学の対象を変えた藤村の文体の基礎を成す作品。用語、時代背景などについての詳細な注解を付す。アマゾン商品説明より