2018年
268頁
定価:3,000円(税別)
目次(収録作品)
序章 「月性はどんな人物だ」藩公が問う
第1章 山海の地勢が人をつくる
第2章 勤王と海防論に目覚める
第3章 海からの脅威・異国船と植民地化
第4章 耶蘇教侵入を鎖国制度で排除
第5章 海の危機、歴史と思想・制度を生む
第6章 海防・独立・尊王運動へ
第7章 維新回天へ黎明の風
第8章 倒幕、王政復古へ義兵を
第9章 内憂外患制して国家新生へ
第10章 皇国の大変革に備えよ
終章 明治維新 歴史が新しい歴史をつくる
周防国(すおうのくに)遠崎(とおざき)村の浄土真宗本願寺派妙円寺に、月性(げっしょう)という若き僧侶がいた!
天保2年15歳の時に九州へ行き、佐賀や豊前で漢学詩文を学び、長崎で遊んだ後、「男児 志を立てて郷関を出づ──人間(じんかん) 到る処 青山(せいざん)有り」の詩を残して大坂へ行き、篠崎小竹の梅花塾に入り、塾頭となった。ついで嘉永6年36歳の時に海防を自らの任として帰国して巡講に努め、学塾「清狂堂・時習館」を開いて教育に当り、勤王僧とも海防僧とも称せられた。そして月性は、西欧列強のキリスト教文明侵出に対して、「宗教には宗教で、戦には戦で対峙せよ」と、町、村の草莽崛起(そうもうくっき)による沿岸危機への海防実践を主張した。国家の主権を守るための海防と勤王運動は表裏一体の思想であり、海から生まれた勤王の大義なのであった。
本書は、松陰と月性、久坂玄瑞との邂逅にも触れながら、周防の清狂・月性の思想と行動を跡づける。方外の仏僧・月性の海からの歴史・文明史観であり、老練なジャーナリストによる海洋史観でもある。不透明な海図なき時代の羅針盤となるであろう! 危機の時代を考える必読の書である。
出典:人文書館公式サイト